Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 乳腺
症例3(・DCIS等)/新技術

(S649)

Fly Thruによるバーチャル乳管内視鏡像の評価

Evaluation of Virtual Mammary ductoscopy using Fly Thru

栗田 武彰1, 米山 直樹2, 丸山 敏江2, 久我 衣津紀3, 栗田 幸子1, 嶺 喜隆3

Takeaki KURITA1, Naoki YONEYAMA2, Toshie MARUYAMA2, Itsuki KUGA3, Sachiko KURITA1, Yoshitaka MINE3

1くりたクリニック乳腺・甲状腺, 2東芝医用システムエンジニアリング株式会社ソフトウェア技術部, 3東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部

1Breast & Thyroid, Kurita Clinic, 2Software Engineering Department, Toshiba Medical Systems Engineering Corporation, 3Ultrasound Systems Development, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

はじめに
われわれは3D専用プローブで取得したボリュームデータから透視投影像を再構成することで,管腔内を立体的に移動する画像が得られるFly Thruを開発,乳腺領域に応用し,バーチャル乳管内視鏡として第84回本会学術集会において報告した.
今回はFly Thruで作成したバーチャル乳管内視鏡像がどの程度視覚的に管腔を形成し,管腔内を移動出来たかを検証した.
方法
使用装置はAplio500(東芝メディカルシステムズ),探触子はPLT-1204MV(4Dリニアプローブ/ 12MHz).BモードはPLT-1204BX/12MHz.乳管拡張症例を低速揺動Single Sweepモードを用いてボリュームデータの収集.収集したボリュームデータをFly Thruでバーチャル乳管内視鏡の画像を作成.
Fly Thruの評価をバーチャル乳管内視鏡像として視覚的にどの程度良く形成されたかで下記の3段階に分類.Fly ThruでAランク(以下F-A):管腔が明瞭に描出され,視点の移動も十分ある,Fly ThruでBランク(以下F-B):管腔は描出されているが,視点の移動はあるが短い,Fly ThruでCランク(以下F-C):管腔として描出されていない,視点の移動も不十分.
管腔画像形成率を左右する要因を分析するため,乳管の拡張状態がBモードでどのように描出されているかを下記の3段階に分類した.BモードでAランク(以下B-A):乳管拡張の走行が連続的に明瞭に描出され,コントラスト良好なもの,BモードでBランク(以下B-B):乳管拡張の走行は連続的に描出されているが,コントラストが多少不良なもの,BモードでCランク(以下B-C):乳管拡張はあるが連続的でない,コントラスト不良.
対象
2011年10月より2013年5月までに当クリニックにおいて,Bモード画像で乳管拡張を呈した70症例で,年齢は27〜82歳,平均52.0歳,全例女性.
結果
Fly Thruで作成されたバーチャル乳管内視鏡像のF-Aは42例(60.0%),F-Bは14例(20.0%),F-Cは14例(20.0%)で,画像形成率(AとBの合計)は80%で良好であった.
Fly ThruでF-A42例中41例(97.6%)がBモードでもB-Aであり,Fly ThruでF-CのものでB-Aは1例も無かった.逆にBモードでB-Aの44例中Fly ThruでF-Aは41例(93.2%),BモードでB-Bでは22例中Fly ThruでF-Aであったものは1例(4.5%)のみで,F-Bは11例(50%),F-Cは10例(45.6)であった.BモードでB-Cは4例でFly ThruではすべてF-Cであった.
このことよりBモードでの乳管の描出が良好であることが,Fly Thruでのバーチャル乳管内視鏡像形成には必要なことと考えた.
考察
今回の検討でF-AとF-Bの合計で80%と良好な画像形成率を得た.また事前に施行するBモードでの乳管拡張の描出状態が,Fly Thruでの画像形成に影響を与えることが確認できた.
良好なバーチャル乳管内視鏡像とは①明瞭な管腔形成,②管腔形成を維持しながら一定距離の視点の移動がある,③管腔の性状や分岐状態の観察が可能,④視点移動が容易,などである.
良好なバーチャル乳管内視鏡像を得るためには画像収集時の条件が重要であり,①ある程度以上の乳管径,②拡張の長さ(連続的な拡張),③コントラスト,④管腔内部の状況,⑤プローブによる圧迫の程度が挙げられる.
作像過程の諸問題としては①作成者の経験,②作像の困難さ(Threshold, Transparency,Filterなどの調整程度)がある.
今後の改善としては作像過程の容易さと時間短縮,観察のナビゲーションなど工夫することは多い.
結論
Fly Thruで作成されたバーチャル乳管内視鏡像の画像形成率は80%と良好.Bモードでの乳管の描出が良好であることが画像形成には重要であった.今後は,作成者の熟練度の関わらないような作像過程の工夫が必要である.