Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 乳腺
症例3(・DCIS等)/新技術

(S648)

超音波検査で広がり診断が困難であったnon-invasive apocrine carcinomaの1例

Difficult diagnosis of ductal extension for non-invasive apocrine carcinoma by ultrasonography: Report of a case

櫻井 健一1, 2, 藤崎 滋2, 原 由起子1, 2, 長島 沙樹1, 2, 富田 凉一2, 鈴木 周平1, 2, 前田 哲代1, 2, 平野 智寛1, 榎本 克久1, 天野 定雄1

Kenichi SAKURAI1, 2, Shigeru FUJISAKI2, Yukiko HARA1, 2, Saki NAGASHIMA1, 2, Ryouichi TOMITA2, Shyuhei SUZUKI1, 2, Tetsuyo MAEDA1, 2, Tomohiro HIRANO1, Katsuhisa ENOMOTO1, Sadao AMANO1

1日本大学医学部外科学系乳腺内分泌外科分野, 2医療法人社団藤崎病院外科

1Department of Breast and Endocrine Surgery, Nihon University School of Medicine, 2Department of Surgery, Fujisaki Hospital

キーワード :

最近の超音波診断技術の進歩により,従来診断することが困難であった,乳癌の乳管内進展部位を特定することが可能になりつつある.しかしながら,中には乳管内進展部位の特定が困難な症例もあり,切除範囲の決定に難渋することも少なくない.今回われわれは,非浸潤性アポクリン癌を経験し,乳管内進展部位の同定に難渋したので報告する.
症例は39歳,女性.自治体の行うマンモグラフィ併用乳癌1次検診で異常を指摘されて,2次検診目的に当科を紹介・受診した.理学的に腫瘤は触知せず,乳頭異常分泌は認めなかった.また,所属リンパ節を触知しなかった.マンモグラフィ検査では,右S領域に区域性に微小円形の石灰化を認め,Category 4と診断された.乳房超音波検査(HITACHI, HIVISION Avius)では左乳房CDE領域に26mmで高輝度点状echoを伴う低エコー領域を認めた.Doppler echo検査およびPower Doppler echo検査では同部に豊富な血流信号を認めた.造影MRI検査では左CDE領域に造影効果を認める領域とて描出されたが,Time Intensity Curveは漸増型であり,良性病変が疑われた.超音波ガイド下に吸引式針生検術を施行した.病理組織診断は非浸潤性乳管癌,ER陰性,PgR陰性,HER-2 Score 3+,Ki-67 index 20%の診断であった.全身検索の結果,明らかな遠隔転移を認めなかった.左乳癌(Tis,N0,M0=Stage 0)の術前診断で手術を施行した.
術中超音波検査で低エコー領域を同定し,領域の辺縁より1.5cmの安全マージンをとって乳房円状部分切除術+センチネルリンパ節生検術を施行した.術中迅速診断でセンチネルリンパ節に転移はなく,切除断端も陰性であった.
永久標本の病理組織学的検索では,病変の広がりは33×26×11mmであり,術前・術中の超音波検査で同定された範囲よりも広範囲にわたって乳管内進展が認められたが,全割標本で浸潤部は認めなかった.幸いにも永久標本で切除断端は陰性であった.術後経過は良好であり,第5病日に退院した.
近年の超音波機器の進歩により乳癌の切除範囲の同定は比較的容易になりつつあるが,より正確に描出できれば,さらに切除範囲を限局させることができ,温存率の向上に寄与するものと考えられる.本症例はapocrine DCISであったが,超音波所見としては通常のDCISと変わらないと思われた.