橋本 裕希¹, 村田 あや¹, 宮本 直樹¹, 高森 稔弘¹, 細田 優太¹, 佐藤 研吾¹, 福田 千佐子¹, 石黒 清介³, 広岡 保明^{1, 2}

Yuki HASHIMOTO¹, Aya MURATA¹, Naoki MIYAMOTO¹, Toshihiro TAKAMORI¹, Yuta HOSODA¹, Kengo SATO¹, Chisako FUKUDA¹, Kiyosuke ISHIGURO³, Yasuaki HIROOKA^{1, 2}

¹鳥取大学医学部保健学科病態検査学, ²鳥取大学医学部附属病院消化器外科, ³鳥取大学医学部附属病院乳腺内分泌外科

¹Department of Pathobiological Science and Technology, School of Health Science, Tottori University Faculty of Medicine, ²Department of Gastrointestinal Surgery, Tottori University Hospital, ³Department of Mammoendocrinology, Tottori University Hospital

キーワード :

【はじめに】
マンモグラフィ（以下，MMGと略記）検診の普及によりMMGで石灰化を指摘された症例の精査が重要になってきている．石灰化の検出にはMMGが優れているが，近年の超音波診断装置の改良あるいは新たな画像処理機能により，超音波検査（以下，USと略記）においても石灰化を検出することは可能になってきている．USによる石灰化の検出能に関する研究はこれまでいくつか行われており，それらの多くは非触知でMMGの石灰化のみで発見された非浸潤性乳管癌（以下，DCISと略記）に関するものである．これまでの研究では，DCISのcomedo typeとnon-comedo typeを比較すると，悪性度の高いcomedo typeの方がUSにおける石灰化の検出率が高いと報告されている．しかし，石灰化を有しているのはDCISのみではなく，浸潤癌においても石灰化は存在する．今回われわれは，当院を受診した，特に浸潤性乳癌患者において，USでの石灰化検出の意義を病理学的所見と比較検討したので報告する．
【対象と方法】
2012年1月から2013年8月に鳥取大学医学部附属病院乳腺内分泌外科にてMMGおよびUSを施行し，乳癌と診断され，手術を施行した88例を対象とした．初回診察時に撮影した超音波画像を乳腺専門医とともにレトロスペクティブに読影し，石灰化と判断した点状高エコーの有無とMMG所見および切除標本の病理学的所見との関連性について検討を行った．
【結果】
全88例中，MMGにて石灰化を認めたのは33例，石灰化を認めなかったのは55例であった．33例のうち，USで点状高エコーとして石灰化を検出できていたのは31例であった．USの石灰化検出における感度は93.9％，特異度は96.4％であった．
USの石灰化検出における偽陽性2例，偽陰性2例を除いた84例において，USの点状高エコーの有無と病理学的所見を比較すると，点状高エコーを認めない症例はサブタイプのLuminal Aが有意に多く，浸潤性乳管癌における核異型度，核分裂像，核グレードについては有意にグレードが低かった．一方，点状高エコーを認める症例は有意にリンパ管侵襲（＋），comedo壊死（＋），MIB-1高値，リンパ節転移（＋）であった．
また，偽陽性2例，偽陰性2例を除いた84例において，病理学的にcomedo壊死を認めたのは41例であった．41例中，USおよびMMGで石灰化を認めたのは24例（58.3％）であった．しかし，それら24例のMMG所見を分析すると，多形性あるいは微細線状・分枝状の石灰化（壊死型の石灰化を疑う）は21例（51.2％），淡く不明瞭な石灰化（分泌型の石灰化を疑う）は3例であった．
【考察】
リンパ管侵襲（＋），comedo壊死（＋），MIB-1高値，リンパ節転移（＋）といった悪性度が高いと言われる病理学的所見を有している症例ほどUSにおいて石灰化を捉えることが可能であった．また，MMGおよびUSの両者で石灰化を検出できる症例は壊死型の石灰化，つまり，comedo壊死を有している可能性が高かった．
このことより，USでの石灰化検出は，悪性度の予測因子の一つになりうるのではないかと思われた．