池田 達彦¹, 澤 文², 古屋 舞², 市岡 恵美香², 斎藤 剛², 清松 裕子², 井口 研子¹, 坂東 裕子¹, 原 尚人¹

Tatsuhiko IKEDA¹, Aya SAWA², Mai FURUYA², Emika ICHIOKA², Tsuyoshi SAITO², Hiroko KIYOMATSU², Akiko IGUCHI¹, Hiroko BANDO¹, Hisato HARA¹

¹筑波大学医学医療系乳腺甲状腺内分泌外科, ²筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科

¹Breast and Endocrine Surgery, University of Tsukuba, ²Breast, Thyroid and Endocrine Surgery, University of Tsukuba Hospital

キーワード :

【目的】
一般に乳癌術前化学療法の臨床的効果判定は病変の最大径の変化によってなされるが，内部の壊死や瘢痕組織の残存により正確にとらえられない症例もある．特に超音波検査では効果判定は難しいという報告が多く見られる．ただしMRIと併用することでPathological CRの感度79％，特異度98％という報告も見られ，その有用性が示唆されている．pCRの有無で予後との相関も指摘されており，また手術の際の正確な切除範囲の決定に必要であり，画像検査による効果判定，残存する腫瘍の拡がり診断は非常に重要である．
【対象と方法】
2009年4月より2013年12月までに当院にて術前化学療法を施行された126症例，130病変を対象とした．術前化学療法前後に超音波検査にて効果判定を行い，また大部分の症例ではMRI検査も行った．術後病理診断の結果よりpCRを得られた症例を確認した．
【結果と考察】
術前化学療法を施行した症例のうち，画像診断にてCRと判断した症例は15例のみだった．術後にpCRと診断された症例は39例で，そのうち12例に乳管内成分の残存を認めた．pCRと診断された症例のうち12例は術前にCRと判断が可能だった．12例のうち，ホルモン受容体（ER/PR）陽性・HER2陰性が1例，ER/PR陽性・HER2陽性が1例，ER/PR陰性・HER2陽性が5例，ER/PR陰性・HER2陰性が5例だった．超音波検査およびMRI検査によるpCRの感度は30.8％で特異度は96.7％だった．また陽性的中率は80％で陰性的中率は76.5％だった．今回の検討で感度が他の報告に比較して低い結果となったが，超音波検査にて線維化，壊死などを過大評価したことが原因の一つと考えられた．今後は，最近有用性の報告の散見される造影超音波検査を当科においても行っており検討を進めて行く予定である．またマンモトーム生検等による評価を加えることで術前のpCRの正診率の向上につながる可能性が考慮されている．