Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 乳腺
症例2(・DCIS等)

(S646)

なぜ乳腺の線維性間質が高エコーに見えるのか?

Why does fibrous stroma appear hyperechoic?

大貫 幸二1, 宇佐美 伸1, 八重樫 弘2, 小野 貞英2

Koji OHNUKI1, Shin USAMI1, Hiroshi YAEGASHI2, Sadahide ONO2

1岩手県立中央病院乳腺・内分泌外科, 2岩手県立中央病院病理科

1Department of breast and endocrine surgery, Iwate Prefectural Central Hospital, 2Department of Pathology, Iwate Prefectural Central Hospital

キーワード :

【目的】
乳腺実質は超音波検査上高エコ−として観察されるが,なぜ高エコーであるかについての検証は不十分である.手術標本の正常部分について,標本の固定状態を変え超音波検査を行い病理像と対比させることによって,乳腺実質の超音波組織特性について考察を加える.
【対象と方法】
乳房全摘術標本の乳癌と離れた正常部分において,組織を伸展させ固定した部分(A)とホルマリンの中に自由にさせた部分(B)について,超音波検査を行い病理像と対比させた.
【結果】
超音波検査においてAの乳腺実質は生体内とほぼ同様のエコ−レベルを示したが(図右),Bでは極低から無エコーとなり後方エコーは減弱していた(図左).病理像では,Aは膠原線維が水平方向に規則性を持って走行していたが,Bでは膠原線維は不規則で波状を呈していた.
【考察】
izumoriらは,乳腺の間質は膠原線維が密な部分と疎な部分でエコーレベルが異なることを報告した.膠原線維が疎な部分が高エコーとして観察されるが,従来反射源とされている脂肪組織の入り込んでいない部分も高エコーである.今回の超音波画像と病理組織の対比からは,高エコー部分は膠原線維が超音波ビームと垂直な方向に走っていることから,正反射が起こっている可能性が考えられた.また,低エコー部分では散乱減衰が大きくなっている可能性がある.生体内で減衰の大きい乳腺を観察する時に,探触子で圧迫すると乳腺が高エコーになり観察しやすくなるのは,膠原線維や乳管腺葉系を水平方向に伸展させているためかもしれない.
【結語】
今後も正常乳腺の超音波像についてのさらなる検討が望まれる.