Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 乳腺
造影・Vascularity1

(S643)

被膜を有する乳頭状乳腺腫瘍の3例の造影超音波所見

Contrast-enhanced ultrasound findings of encapsulated papillary neoplasm of the breast : A report of three cases

武輪 恵1, 平井 都始子2, 丸上 亜希3, 丸上 永晃2, 伊藤 高広3, 中村 卓4, 小林 豊樹5, 中井 登紀子6, 吉川 公彦3

Megumi TAKEWA1, Toshiko HIRAI2, Aki MARUGAMI3, Nagaaki MARUGAMI2, Takahiro ITOH3, Takashi NAKAMURA4, Toyoki KOBAYASHI5, Tokiko NAKAI6, Kimihiko KICHIKAWA3

1平成記念病院放射線科, 2奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部, 3奈良県立医科大学放射線科, 4三重大学医学部付属病院乳腺センター, 5奈良県立医科大学乳腺外科, 6奈良県立医科大学病理診断学講座

1Department of Radiology, Heisei Memorial Hospital, 2Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 3Department of Radiology, Nara Medical University, 4Breast Center, Mie University Hospital, 5Department of Surgery, Nara Medical University, 6Department of Diagnostic Pathology, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
ソナゾイド乳腺造影超音波検査は,Bモード単独での診断に比べて,良・悪性の鑑別診断に優れると報告されている.今回,私たちは,病理組織学的に被膜構造に囲まれ,乳頭状(樹枝状の血管結合組織を上皮細胞が覆う)構造を示す腫瘤(良性1例,悪性2例)の造影超音波検査を経験し,診断に有用な知見を得たので報告する.
【症例1】
70歳台,女性.主訴:左乳房腫瘤触知,現病歴:2013年2月入浴時に左乳房の腫瘤に気付き,近医受診し,MMGと超音波検査で乳腺腫瘤を指摘された.穿刺吸引細胞診で疑陽性となり,乳癌疑いとして精査加療目的に乳腺外科紹介.視触診所見:左乳房C領域に2.7×2.5cmの境界明瞭な腫瘤を触知.弾性やや硬,緊満感あり.超音波所見:Bモードで,境界明瞭分葉形の混合性腫瘤を認めた.腫瘤内に,基部の狭い充実成分を伴い,カラードプラ法で基部から1本の血管が樹枝状に分岐し充実成分に流入する豊富な血流信号が描出された.造影超音波では,濃染が基部付近から始まり,緩徐に全体に広がり,3分後でも持続していた.手術の結果,病理組織学的に乳管内乳頭腫(intraductal papilloma)と診断された.
【症例2】
50歳台,女性.主訴:右乳房腫瘤触知.2013年3月右乳房腫瘤に気付くが放置.同年5月の乳癌検診時のMMGで腫瘤を指摘された.針生検の結果,乳癌と診断され,精査加療目的に紹介.視触診所見:右乳房AC領域に2.2×2.5cmの境界比較的明瞭な腫瘤を触知.弾性硬.超音波所見:Bモードで,境界明瞭,分葉形低エコー腫瘤を認めた.腫瘤内に嚢胞様構造を示唆するスリット状無エコー域が見られた.カラードプラ法で多方向から流入する血流信号が描出された.造影超音波では,腫瘤全体が急速に強く濃染し,緩徐なwash outが見られるものの,2分以降も濃染が持続していた.濃染域の境界はBモードで描出された範囲を超えず,嚢胞様構造以外の領域の濃染は均一であった.手術により,病理組織学的に被包性乳頭癌(encapsulated papillary carcinoma)と診断された.
【症例3】
70歳台,女性.主訴:左乳頭血性分泌,現病歴:2012年11月に左乳頭血性分泌に気付き,近医での精査の結果乳癌と診断され,手術目的に紹介.視触診所見:左乳房CD領域に2.0×2.0cmの腫瘤触知.境界不明瞭,弾性硬.超音波所見:Bモードで,境界明瞭,分葉形低エコー腫瘤を認めた.カラードプラ法で多方向から流入する血流信号が描出された.造影超音波では,全体が急速に強く濃染し,一旦wash outしたあと,再び濃染が強まり遷延する濃染を示した.濃染の境界はBモードで描出された範囲を超えず,内部は均一であった.手術により,病理組織学的に充実乳頭癌(solid papillary carcinoma)と診断された.
【考察】
カラードプラ法において,症例1では基部から流入する血流信号が,症例2,3では,多方向から流入する血流信号が描出された.また,腫瘤の早期濃染は,症例1では基部から全体に緩徐に広がり,症例2,3では全体が急速に濃染した.乳腺腫瘤のソナゾイド造影超音波検査では,腫瘤全体の一様な濃染は良性,不均一な濃染やBモードで描出される腫瘤の境界を超えて広がる濃染は悪性に特徴的という,濃染の形状パターンの有用性が既に報告されている.しかし,今回の造影超音波検査では,悪性病変である症例2,3においても良性の形状パターンを示した.被膜を有する乳頭癌では,濃染の形状パターンのみでは,悪性の診断が困難な場合があり,より正確な診断のために,Time intensity curveでのピークに達するまでの速さや,カラードプラ法で観察される血管構築の特徴と合わせた検討を必要とすることが示唆されたと考える.