奥野 敏隆¹, 内田 浩也², 登尾 薫², 佐藤 信浩², 山野 愛美², 大石 悠香², 真鍋 美香², 井芹 通子³, 曾我 登志子³, 畠山 祥子³

Toshitaka OKUNO¹, Hiroya UCHIDA², Kaoru NOBORIO², Nobuhiro SATOH², Megumi YAMANO², Yuka OHISHI², Mika MANABE², Michiko ISERI³, Toshiko SOGA³, Shoko HATAKEYAMA³

¹西神戸医療センター乳腺外科, ²西神戸医療センター臨床検査技術部, ³岡本クリニック超音波室

¹Department of Breast Surgery, Nishi-kobe Medical Center, ²Department of Clinical Laboratory, Nishi-kobe Medical Center, ³Division of Ultrasound Examination, Okamoto Clinic

キーワード :

【目的】
乳房腫瘍に対するソナゾイド造影超音波検査において，良悪性の鑑別には現状，臨床試験に用いられた評価基準，すなわち染影の強さや広がりと均一性，染影欠損の有無，染影の時間的変化が用いられている．しかし，これは多彩な病理像を呈する乳腺腫瘍の血流様式の詳細を的確に反映しているとは言い難い．そこで，診断能の向上を目的とし，組織像と造影超音波所見を対比し，病理組織像を反映した特徴的な血流様式について検討した．
【対象】
ソナゾイド造影超音波を行った22病変を対象とした．乳癌11例，年齢35—73歳（中央値59歳），腫瘍径18±6.7mm，全例手術により組織診断を行った．良性乳腺腫瘍11例，年齢17—69歳（中央値39歳），腫瘍径23±9.1mm．良性腫瘍のうち切除により組織型が確定したものは5例（線維腺腫3例，乳管内乳頭腫1例，線維症1例）．針生検または細胞診を行って線維腺腫と診断しているものが3例，細胞診のうえ濃縮嚢胞としているものが1例，温存術後の創部瘢痕としてフォローしているものが2例である．
【方法】
使用装置はToshiba Aplio 500およびAplio XG．設定はPhase subtraction low mode，MI値は0.16-0.21．ソナゾイド（0.015ml/kg）を静脈内投与し，生食水でフラッシュした．Bモードで最も特徴的な断層面を定め，同部で固定し染影パターンを観察，染影が低下したのちに再度ゾナゾイドを投与しMFI（Micro Flow Imaging）による積算画像を撮像し，血管構築を観察した．保存された造影超音波動画像を後ろ向きに，染影の均一性・強さ，染影欠損の有無について評価した．そして病理組織診断が確定した16例について染影所見と病理組織像の対比を行った．
【結果】
乳癌11例において，染影の均一性は均一2例，不均一9例，染影の強さは強い8例，淡い3例であった．また，部分的な染影欠損を6例に認めた．全体が均一な染影を示したものは腫瘍径11mmのsolid papillary carcinomaと17mmのintraductal papilloma with DCISの2例であった．繊細な線維血管性間質を伴った均一な腫瘍細胞の増生を認めた．また，染影欠損を示した6例のうち2例はintraductalおよびintracystic papillary carcinomaであった．拡張した乳管の非腫瘍部が染影欠損を示した．そして2例は浸潤癌で中心部壊死に伴う空洞変成および線維化を認めた．残り2例は化学療法後の症例で治療後の線維化を認めた．良性病変11例のうち3例は病変全体が染影を受けず，7例は均一な染影を，残り1例は不均一な染影と一部染影欠損を示した．染影された8例中5例は強い，3例は淡い染影を示した．全く染影を認めなかった3例のうち1例は濃縮嚢胞であった．残りの2例は乳癌温存術後の瘢痕の症例であった．組織像が参照できた5例のうち，線維症の1例では著明な線維増生と血管の減少を反映して不均一な染影と一部に染影欠損を示した．線維腺腫の3例では腫瘍全体に大きさと分布の均一な血管を認め，均一な染影（いわゆるtree-like branching）を示した．乳管内乳頭腫の1例では腫瘍全体に均一に分布する太い線維血管性間質と上皮増生を認め，腫瘍全体が均一に強く染影された．
【考察】
病理像を反映した特徴的な染影パターンが観察された．線維腺腫のtree-like branching，良悪性に関わらず乳頭状病変の強い均一な染影など，特徴的な所見を加味した診断基準の作成が望まれる．