英文誌(2004-)
一般口演 乳腺
症例1
(S640)
乳腺原発悪性リンパ腫3例の超音波所見の検討
Ultrasonographic characteristics of Primary Malignant Lymphoma of the Breast
周山 理紗, 伊藤 吾子
Lisa SUYAMA, Ako ITOH
日立製作所日立総合病院外科
Department of Surgery, Hitachi General Hospital
キーワード :
【はじめに】
乳腺原発悪性リンパ腫は非常に稀な疾患であり,乳癌との鑑別が問題となる.今回我々は針生検にて乳腺原発悪性リンパ腫と診断し得た3例を経験したので検討,報告する.
【対象】
針生検にて乳腺原発悪性リンパ腫と診断された3例(すべて女性,年齢49〜67歳(中央値:50歳),腫瘍径21-35mm(中央値:29mm)).
【結果】
いずれの症例も急速に増大する乳房腫瘤を主訴に来院.マンモグラフィでは3例に共通する特異的所見は認めなかった.超音波所見としては,縦横比の低い境界明瞭な腫瘤で,内部は極低エコー〜低エコー,後方エコーは不変〜増強を示した.血流はhypervascular,Elastographyでは3例ともscore 2であった.超音波所見より悪性リンパ腫を鑑別にあげ,針生検にて3例ともDLBCL(Diffuse Large B-cell Lymphoma)と診断した.PET検査では,乳房にFDGの強い集積を認めたほかは,他部位への明らかな集積は認めず,乳房原発と診断した.3例とも手術は施行せず,化学療法と放射線療法の併用にて治療を行い,2例は完全寛解を認め,1例は原病により死亡している.
【考察】
乳腺原発悪性リンパ腫は乳腺悪性腫瘍の約0.04〜0.5%,節外性リンパ腫の約1〜2%を占める非常に稀な疾患である.年配女性に好発し,無痛性の乳房腫瘤として触知する.超音波像の特徴は細胞成分が多い事を反映して,極低エコー,嚢胞様エコー,あるいはpseudo-cystic pattern(低い内部エコーと後方エコーの増強)が特徴であるとされている.充実腺管癌との鑑別を要するが,縦横比が低いことと,Elastographyで比較的やわらかいものの血流は豊富なことが相違点と考えられる.針生検による病理学的診断は重要である.乳腺原発悪性リンパ腫の治療は組織型やステージによって異なるが,一般的な悪性リンパ腫の治療に準ずる.化学療法や放射線療法が主体であり,乳房切除は予後改善には全く寄与しないとの報告があるため,正確な術前診断が必要となる.超音波にてBモードに加え,Elastographyや血流評価を含めた総合的な診断が有用であると考えられた.