Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
妊娠初期

(S638)

経腹超音波断層法で診断した子宮内外同時妊娠の1例

A case of heterotopic pregnancy diagnosed by transabdominal ultrasonography

古株 哲也, 吉原 雅人, 眞山 学徳, 鵜飼 真由, 小出 菜月, 近藤 真哉, 宮﨑 のどか, 原田 統子, 岸上 靖幸, 小口 秀紀

Tetsuya KOKABU, Masato YOSHIHARA, Michinori MAYAMA, Mayu UKAI, Natsuki KOIDE, Shinya KONDO, Nodoka MIYAZAKI, Toko HARATA, Yasuyuki KISHIGAMI, Hidenori OGUCHI

トヨタ記念病院周産期母子医療センター産科

Department of Obstetrics, Perinatal Medical Center, Toyota Memorial Hospital

キーワード :

【緒言】
異所性妊娠は全妊娠の0.5-1.5%とされるが,子宮内外同時妊娠はさらにまれで,自然妊娠で30000例に1例,排卵誘発剤使用時では900から3900例に1例,体外受精胚移植時では100から666例に1例の頻度で出現するとされている1).今回われわれは排卵誘発剤で妊娠し,経腹超音波断層法で診断した子宮内外同時妊娠を経験したので報告する.
【症例】
33歳.1経妊1経産.既往歴に特記すべき事項はない.近医で不妊治療として排卵誘発剤を使用後に妊娠し,妊娠管理されていた.妊娠6週頃より下腹部痛を認め,切迫流産の診断で内服治療を行っていた.妊娠10週2日に下腹部痛が増悪したため,当院救急外来に救急搬送となった.来院時の経腟超音波断層法では子宮内に胎嚢(gestational sac; GS)が確認でき,胎児頭殿長(crown rump length; CRL)は33 mmで発育は良好であったが,5.1×2.2 cmの絨毛膜下血腫を認めた.腹痛は自然軽快したが,性器出血が多く,入院の上,ピペリドレート塩酸塩の内服治療を行った.妊娠10週5日に再度下腹部痛が増悪した.経腹超音波断層法では子宮内にGSを認めたが,子宮右側に48.4 mmのGS様構造物とその内腔にCRL 33.1 mmの胎児と腹腔内にecho free spaceを認めた.右卵管妊娠との子宮内外同時妊娠と診断し,同日緊急腹腔鏡下手術を施行した.全身麻酔下に腹腔鏡で観察すると膀胱子宮窩前面に達する腹腔内出血を認めた.右卵管膨大部は膨隆し,破裂していた.右卵管膨大部妊娠破裂と診断し,右卵管摘出術を施行した.摘出した卵管は52 gで肉眼的に絨毛組織や胎児成分を認めた.術後経過は良好で術後5日目(妊娠11週3日)の診察所見ではCRL 43 mmで,絨毛膜下血腫は消失しており,術後6日目に退院となった.その後の妊娠経過は順調で,現在妊娠32週となり,外来で妊娠管理中である.
【結論】
子宮内外同時妊娠はまれで,子宮内に胎児を認めるため,異所性妊娠の診断が遅くなり,発見時に重篤な状態に陥る可能性が高く注意を要する.不妊治療後に妊娠成立し,妊娠初期に下腹部痛を認めた場合には子宮内外同時妊娠も念頭に置き,診察することが必要である.
【文献】
1)Clayton HB, Schieve LA, Peterson HB, et al. A comparison of heterotopic and intrauterine-only pregnancy outcomes after assisted reproductive technologies in the United States from 1999 to 2002. Fertil Steril 2007; 87:303.