Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
妊娠初期

(S637)

卵管妊娠における術前経腟超音波断層法に関する検討

Transvaginal ultrasound of tubal pregnancy

河野 通晴1, 吉田 至幸1, 濱口 大輔1, 北島 百合子1, 平木 裕子1, 妹尾 悠1, 藤下 晃1, 平木 宏一2, 増﨑 英明2

Michiharu KONO1, Sikou YOSHIDA1, Daisuke HAMAGUCHI1, Yuriko KITAJIMA1, Hiroko HIRAKI1, Haruka SENOO1, Akira FUJISHITA1, Koichi HIRAKI2, Hideaki MASUZAKI2

1済生会長崎病院婦人科, 2長崎大学病院産婦人科

1Gynecology, Saiseikai Nagasaki Hospital, 2Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University Hospital

キーワード :

【緒言】
異所性妊娠は全妊娠のおよそ0.5から1%程度に発症する産婦人科救急疾患の1つである.近年,クラミジア感染症による卵管障害や生殖補助診療の普及などにより,異所性妊娠の頻度は増加している.また,高感度hCG測定法の開発や経腟超音波断層法の普及により,破裂する前の早期診断が可能になってきた.
術前に異所性妊娠を疑う所見としては,子宮内に胎像(以下GSと略す)がなく,子宮外にGSおよび胎芽心拍が検出できれば確定できるが,子宮外のGS内に心拍像がみえる頻度は10%程度と報告されており,決して高い頻度ではない.実際には子宮外のGS像,ダグラス窩あるいはレチウス窩のエコーフリー像(以下EFSとする),付属器領域の血腫像などが超音波断層法の所見として重要である.そこで当科で取り扱った異所性妊娠の経腟超音波所見をretrospectiveに再評価した.
【目的】
腹腔鏡下手術で確定診断し,治療を行った異所性妊娠のなかで,卵管妊娠における術前超音波所見を検討し,それらの特徴および頻度について解析した.
【対象と方法】
2009.4から2013.3の期間に当科で腹腔鏡下手術を施行し,確定診断した異所性妊娠141例を検討し,このなかで間質部,卵巣,腹膜および頸管妊娠を除外した117例の卵管妊娠を対象とした.全症例の術前超音波所見について,カルテを再調査した.ダグラス窩およびレチウス窩EFSの計測方法は,以前我々が報告した測定法に準じており1),ルテイン嚢胞は3cm以上の単房性嚢胞性腫瘤像と定義した.
【結果】
卵管妊娠117例の部位別内訳は膨大部102例(87%),峡部9例(8%)および采部6例(5%)であった.全症例の平均年齢は30±5.2歳で,卵管妊娠の既往があったのが10例(8%),不妊治療中の症例は12例(10%)であった.術前に子宮内にpseudo GS像を認めたのは9例(8%)でいずれも膨大部であった.子宮外にGSを確認できた症例は58例(49%),部位別では膨大部54例(53%),峡部2例(22%)および采部2例(33%)であった.
全症例のなかで胎芽心拍を認めたのは12例(10%)であり,その内訳は膨大部10例,峡部2例で采部では認めなかった.また胎芽心拍は認められないが卵黄嚢を認めた症例は6例であり,これらは全て膨大部であった.また子宮周囲のEFSを認めた症例は78例(66%)であり,ダグラス窩のみ認めたのが52例(44%)で,内訳として膨大部48例,峡部2例,采部2例であった.レチウス窩まで認める症例が23例(19%)で膨大部20例,采部3例であったが峡部では認めなかった.またルテイン胞を認めた症例は9例(8%)で,左右がはっきりしている7例のうち胞と同側の卵管に妊娠していた症例は4例であり,3例は対側の卵管妊娠例であった.
【結論】
腹腔鏡下で確定診断した卵管妊娠症例の超音波所見について後方視的に検討した結果,峡部妊娠においては,超音波断層所見からは腹腔内に出血する頻度が少なかったが,これは破裂前に卵管妊娠を疑って腹腔鏡下手術が適用されたケースが多かったためと推察された.一方,最も頻度が高い膨大部妊娠においては,子宮外のGS像が検出できた頻度は49%(58/117例)に過ぎず,臨床症状やhCGの推移から異所性妊娠と診断したケースが多かった.またpseudo GS像の検出頻度は全体で8%であったが,これはすべて膨大部例であった.なお,ルテイン胞の存在側と卵管妊娠側は,必ずしも一致していないことも判明した.
【参考文献】
1)平木宏一,藤下 晃,宮村泰豪,他:経腟超音波断層法による腹腔内出血の簡易推定法に関する検討.日産婦誌.14:805-809,1997.