Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
妊娠初期

(S637)

経腟プローブのHPV・細菌汚染実態調査

HPV and bacteria contamination of transvaginal ultrasound probes

桑田 知之1, 鯉渕 晴美2, 市塚 清健3, 名取 道也4, 高橋 宏典1, 松原 茂樹1

Tomoyuki KUWATA1, Harumi KOIBUCHI2, Kiyotake ICHIZUKA3, Michiya NATORI4, Hironori TAKAHASHI1, Shigeki MATSUBARA1

1自治医科大学医学部産科婦人科, 2自治医科大学医学部臨床検査医学, 3昭和大学医学部産婦人科, 4慶応義塾大学医学部産婦人科

1Obstetrics and Gynecology, Jichi Medical University, 2Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University, 3Obstetrics and Gynecology, Showa University School of Medicine, 4Obstetrics and Gynecology, Keio University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
医用検査機器は,患者の身体に直接接して検査を行うことが多く,これらの感染対策は重要である.なかでも患者の体内,粘膜面などに接する可能性のある装置については必須であり,十分に感染対策に留意する必要がある.経腟プローブも例外ではなく,体内に挿入し,粘膜面に接する機器であるため,患者毎の徹底した除染が必須であるが,国内ではラテックスカバー以外の防御対策については,ほぼなされていないのが現状である.
ヒトパピローマウイルス(HPV)は,子宮頸がんの原因ウイルスであることが知られている.日々の臨床でカバーを用いて使用されたプローブ本体から,子宮頸がん発症リスクの高いハイリスクHPVが検出されたことが報告された.その後,世界超音波医学生物学連合(WFUMB)の安全委員会は,プローブを介したヒトパピローマウイルス(HPV)等の感染可能性があるので,「患者毎にプローブそのものを高レベル消毒すべき」とのガイドライン案を各国に提示した.この消毒法は,患者毎に行う複雑なものであり,これをそのまま我が国に当てはめると,現場は大混乱に陥る可能性がある.日本では諸外国に比べて,一日当たりの経腟プローブの使用頻度が極めて高いが,国産のプローブカバーは品質が高いこと,日本は細菌性腟症の頻度やHPV感染者割合が低いことから,諸外国のデータと単純比較することができない可能性があると考え,まずは経腟プローブの汚染実態を調査することにした.
【対象と方法】
対象は,当院産婦人科外来の経腟超音波プローブのべ20本である.日常臨床で行われている手順に準じてプローブカバーを患者毎に交換し,使用した.1日の検査終了後,プローブが細菌,HPVに汚染されていないか調査した.検査は,どちらも綿棒で探触子をスワブする方法で行った.また,装置で最も触れると思われる,フリーズボタンとトラックボールの汚染も調査した.
【成績】
HPV汚染は,プローブ20本中2本に確認された(10本).いずれも頸がんのハイリスク型であった.細菌汚染は,コリネバクテリウムが1本のみわずかに検出されたのみであった.また,フリーズボタンとトラックボールからはHPVは検出されなかったが,多くの細菌が検出された.
【結論】
経腟プローブには,ハイリスクHPVウイルスの汚染が10%に見られた.プローブ先端の細菌汚染はほとんど見られなかったが,フリーズボタンとトラックボールには,多数の菌が付着していることが分かった.経腟超音波検査を行おうとする者は,経腟プローブのHPV汚染や装置の細菌汚染について,常に念頭に置いて装置を使用すべきである.なお今後は本学会の経腟探触子消毒に関する小委員会で多数例検討の上,我が国における適切な消毒法を提示していく予定である.