Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
婦人科疾患

(S633)

卵巣癌において傍大動脈リンパ節転移を評価するための術中超音波検査の有用性

Effectiveness of intraoperative Ultrasonography for para-aortic lymph nodes in preventing unnecessary lymphadenctomy in ovarian carcinoma

瀬戸 理玄, 梁 栄治, 鎌田 英男, 櫻井 理奈, 松本 泰弘, 木戸 浩一郎, 綾部 琢哉

Michiharu SETO, Eiji RYO, Hideo KAMATA, Rina SAKURAI, Yasuhiro MATSUMOTO, Koichiro KIDO, Takuya AYABE

帝京大学医学部附属病院産婦人科

OB&GY, Teikyo Univ

キーワード :

【目的】
これまで我々は婦人科悪性腫瘍の傍大動脈リンパ節転移の評価について,術中超音波検査の精度が高いこと,子宮体癌においては傍大動脈リンパ節郭清が不要である例を抽出するのに有用であることを報告してきた.卵巣癌においては,傍大動脈リンパ節が転移の頻度が最も高い.今回は,卵巣癌の傍大動脈リンパ節転移の評価において,術中超音波検査の精度を,CTおよび腹腔内所見(T stage)と比較した.
【対象】
帝京大学産婦人科で2002年から2010年に骨盤および傍大動脈リンパ節郭清を施行した87例の卵巣癌症例を対象とした.
【方法】
1.術前にCT検査によって,傍大動脈リンパ節の腫大の有無を放射線科医師が判定した.
2.術中に腹腔内に超音波プローブを挿入し,傍大動脈領域のリンパ節腫大の有無を婦人科医師が判定した.超音波機器はToshiba medical system NEMIO SSA 550A及びPVF738Hの7.5MZの術中用プローブを使用した.
3.術中の所見および病理所見からT stageを決定した.
4.郭清したリンパ節について転移の有無を病理学的に判定した.
<検討内容>
CTで腫大,あるいは術中超音波検査で径5mm以上のリンパ節腫大を認めた場合を転移陽性,また,T1以外の場合にリンパ節転移陽性と判断した場合のCT,術中超音波検査・腹腔内所見が,病理学的な傍大動脈リンパ節転移をどの程度予測できるかについて感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率を算出した.
【結果】
病理学的に21人の患者に傍大動脈リンパ節転移を認めた.この21例中,CTにて傍大動脈リンパ節の腫大ありと判定されたものは10例となり,感度は47.6%(10/21),転移を認めなかった66例中,腫大なしと判定されたものは61例で特異度は92.4%(61/66)であった.また,CTで腫大ありと判定されたのは15例で,そのうち10例に病理学的な転移を認めたため,陽性的中率は66.7%(10/15)であり,腫大なしと判定された72例中,61例で転移陰性であったため陰性的中率は84.7%(61/72)であった.同様に術中超音波検査については,感度95.2%(20/21),特異度57.6(38/66),陽性的中率41.7%(20/48),陰性的中率97.4%(38/39)であった.腹腔内所見については,転移21例中,16例がT2-3であったため,感度が76.1%,(16/21),転移がなかった66例中,44例がT1であったため,特異度は66.7%(44/66),陽性的中率42.1%(16/38),陰性的中率は89.8%(44/49)であった.
【考察】
リンパ節転移の可能性が高い症例のみリンパ節郭清をする立場に立った場合,郭清による病理検索によって疑陽性はなくなるため,特異度と陽性的中率は重要ではない.逆に転移の可能性が低い場合には郭清せず,病理学的な確認がなされないため,感度と陰性的中率が重要となる.術中超音波検査は傍大動脈リンパ節転移に対する感度と陰性的中率が高く,リンパ節郭清を省略できる症例を抽出することを目的とした場合,CT検査や腹腔内所見と比べて有用であると考えられた.
産科領域の経腟超音波では胎児のnuchal translucencyを1mm単位まで計測可能であることからわかるように,超音波検査は周波数の高いプローブを対象に近づけて観察することが非常に有効である.術中超音波検査はこの手技を可能としており,腫大したリンパ節の検出については,非常に優れていると考えられた.
【結論】
術中超音波検査は傍大動脈リンパ節転移に対する感度と陰性的中率が高く,卵巣癌症例においてもリンパ節郭清を省略できる症例を抽出するのに有用である.
【参考文献】
1)Ultrasound in Obstetrics & Gynecology,32,91-96,2008.
2)International Journal of Gynecological Cancer,21,859-863,2011.