Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
婦人科疾患

(S632)

Smooth muscle tumor of uncertain malignant potential:STUMPの術前超音波所見

A case of STUMP: findings on preoperative ultrasonography

生田 明子1, 溝上 友美1, 石原 美由希1, 保坂 直樹2, 安田 勝彦1, 神崎 秀陽1

Akiko IKUTA1, Tomomi MIZOKAMI1, Miyuki ISHIHARA1, Naoki HOSAKA2, Katsuhiko YASUDA1, Hideharu KANZAKI1

1関西医大産婦人科, 2関西医大香里病院病理部

1Department of Obstetrics and Gynecology, Kansai Medical University, 2Department of pathology, Kansai Medical University, Kori Hospital

キーワード :

【はじめに】
子宮筋腫は,婦人科の日常診療においてもっとも遭遇することの多い良性の子宮平滑筋腫瘍である.性成熟期女性の20-40%に存在するといわれ,無症状のものから過多月経や月経困難などの月経随伴症状,不正性器出血,腫瘤感,下腹部痛,頻尿,便秘など症状は多岐にわたる.典型的な筋腫は,先の自覚症状の他,他覚的所見として双合診による腫大した子宮の触知や,画像検査により診断は容易であるが,非典型的な所見を呈する場合もある.今回,超音波上,高輝度が増強し,MRIでも著しい高信号を呈した筋層内筋腫に対し手術を行ったところ,術後病理診断がSTUMP:smooth muscle tumor of uncertain malignant potential(通常用いられている基準では,良性とも悪性とも確実には診断できない平滑筋腫瘍)であった症例を報告する.
【症例】
54歳,2経産
人間ドックで複数の子宮筋腫と約3cmの左卵巣嚢腫を指摘され,2ヶ月後精査目的で当科紹介となった.なお,子宮筋腫は7-8年前から指摘されており近医で定期検診を受けていたが,大きさ,部位など詳細は不明であった.当科初診時,内診上,子宮体部は鵞卵大に腫大,経腟超音波上,複数の漿膜下,筋層内筋腫を認めた.最大の筋腫は子宮体部前壁位置する約36mmの境界明瞭な筋層内筋腫で,内部エコーはほぼ均一な高輝度を呈し,腫瘤内外に血流は伴わなかった.また,約30mmの単房性左附属器嚢腫は低輝度で内部結節はみられなかった.約3ヶ月後の経腟超音波では,子宮前壁の筋層内筋腫に明らかな増大はみられないものの,著明な高輝度と内部に低輝度を示す不均一なエコー像に変化していた.左附属器嚢胞は約32mmで大きさに変化はみられなかったが,単房性嚢胞に隣接して正常左卵巣が同定でき左傍卵巣嚢胞を疑った.子宮内膜の肥厚はみられなかったが,水様帯下や断続的な不正性器出血を認め,子宮頸部および体部細胞診を施行し,いずれも陰性であることを確認した.腫瘍マーカー(CA-125,CA19-9,CEA, LD, LDアイソザイム)は基準値内であった.造影MRIでは,超音波でみられた高輝度の類円形腫瘤は,T1Wでは,子宮筋層と等信号,T2Wでは筋層との境界が明瞭な高信号の腫瘤として描出され,腫瘤内に約10mmの無信号域を認めた.造影T1Wでは,腫瘤は子宮筋層より高信号,内部に薄い低信号域があるがほぼ均一に造影された.画像上,変性を伴った筋層内子宮筋腫を疑ったが,病理診断,および,持続する水様帯下改善目的に手術を予定した.月経不順で月経が予測できないため,術前にGn-RHアゴニストを投与し,腹腔鏡下子宮全摘術,両側附属器切除術を施行した.腹腔内所見は,子宮体部はやや大で,左附属器に超胡桃大の左傍卵巣嚢胞を認め,子宮支持装置,血管を処理した後,子宮頸部を2分割しながら経腟的に約186gの子宮と左附属器を,約28gの右附属器を摘出した.子宮体部および前壁の腫瘤はGn-RHアゴニストの影響で縮小し,割面は子宮筋層と境界明瞭な黄色の充実性腫瘤であった.同腫瘤は術後病理組織検査でSTUMPが疑われたが,術後に施行したPET-CTで転移はみられなかった.追加療法は行わず現在経過観察中である.
【考察】
超音波検査は,侵襲がなく日常診療で容易に行うことができる.子宮筋腫の定期検診においては,エコー輝度に留意し変化がみられるようなら積極的に造影MRI検査を行い,悪性との鑑別が困難であれば,病理診断のため手術を検討することも必要である.