Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(2)

(S628)

胎児腎盂拡大症例の腎臓超音波所見と生後腎機能予後に関する検討

Sonographic Findings of Fetal Hydronephrosis : Prognostic Predictors of Postnatal Renal Function

大寺 由佳, 住江 正大, 杉林 里佳, 関口 将軌, 梅原 永能, 和田 誠司, 渡辺 典芳, 左合 治彦

Yuka OTERA, Masahiro SUMIE, Rika SUGIBAYASHI, Masaki SEKIGUCHI, Nagayoshi UMEHARA, Seiji WADA, Noriyoshi WATANABE, Haruhiko SAGOU

成育医療研究センター周産期・母性診療センター

Maternal-Fetal and Neonatal Medicine, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【目的】
胎児期に腎盂拡大を認めた症例において,出生前の腎臓超音波所見と生後の腎機能予後との関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】
2003年1月から2011年12月までの期間に,胎児腎盂拡大を理由に紹介された又は当センターで妊娠管理中に腎盂拡大を認めた症例計73例中,分娩後満2歳まで継続して診察を行った29例(男児22例,女児7例)を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討した.当センターで施行した胎児超音波検査の腹部横断面で腎盂前後径(APD; Anterior-Posterior Diameter)が10mm以上であるものを腎盂拡大とした.APD,腎杯拡張の有無は分娩前(1週間以内)に施行した胎児超音波検査で観察したものを用いた.APDが20mm未満を中等度拡大,20mm以上を高度拡大とした.両側性腎盂拡大の場合はAPDの最大値を用いた.児は出生後3日以内に経腹超音波検査を施行し腎盂拡大の有無を判定した.腎機能予後は,尿路感染症,手術,透析の有無を検討し,これらいずれも認めない症例を経過観察群;13例,いずれか一つ以上認める症例を医療介入群;16例とした.2群間で①片側性・両側性腎盂拡大の割合②APDの重症度,③腎杯拡張の有無,④生後の腎盂拡大の有無について比較検討した.統計学的解析にはFisher’s exact testを用い,p<0.05を有意差ありとした.
【結果】
①対象29例で片側性腎盂拡大は17例(58.6%),両側性腎盂拡大は12例(41.4%)であった.経過観察群の片側性腎盂拡大は10/13例(76.9%),両側性腎盂拡大は3/13例(23.1%),医療介入群の片側性腎盂拡大は7/16例(43.8%),両側性腎盂拡大は9/16例(56.2%)であり,2群間に有意差を認めなかった.②対象29例でAPDの中等度拡大が12例(41.4%),高度拡大が17例(58.6%)であった.経過観察群の中等度拡大は8/13例(61.5%),高度拡大は5/13例(38.5%),医療介入群の中等度拡大は4/16例(25.0%),高度拡大は12/16例(75.0%)であった.APDの重症度は,医療介入群で有意に高度拡大が多かった(p<0.05).③対象29例で腎杯拡張を認めた症例は22例(75.9%),認めなかった症例は7例(24.1%)であった.経過観察群で腎杯拡張を認めた症例は7/13例(53.8%),認めなかった症例は6/13例(46.2%),医療介入群で腎杯拡張を認めた症例は15/16例(93.7%),認めなかった症例は1/16例(6.3%)で,医療介入群で有意に腎杯拡張を認めた(p<0.05).④対象29例で生後に腎盂拡大を認めなかった症例は9例(31.0%),認めた症例は20例(69.0%)であった.経過観察群で生後に腎盂拡大を認めなかった症例は6/13例(46.2%),認めた症例は7/13例(53.8%),医療介入群で生後に腎盂拡大を認めなかった症例は3/16例(18.8%),認めた症例は13/16例(81.2%)であり,2群間に有意差を認めなかった.
【結論】
胎児期に腎盂拡大を認める症例において,分娩前の腎盂拡大が高度,または腎杯拡張を認める症例では2歳時までに医療介入する機会が多く,生後の慎重なフォローアップが必要である.