Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(2)

(S628)

妊娠経過中に成長を観察しえたFetus in fetu(胎児内胎児)の1症例

Prenatal Diagnosis of Fetus in Fetu- A Case Report

金井 雄二, 望月 純子, 河野 照子, 大西 庸子, 海野 信也

Yuji KANAI, Junko MOCHIZUKI, Shoko KAWANO, Yoko ONISHI, Nobuya UNNO

北里大学産婦人科

Department of Obstetrics and gynecology, school of Medicine, Kitasato University

キーワード :

胎児内胎児(Fetus in fetu)とは胎児の体内に胎児様形態を含む腫瘤が封入された状態をみとめるもので,50万出生に1例と極めてまれな疾患である.発生学的には原始線条の時期を経た一卵性双胎の一方が他方に寄生的二重体として封入されたものという説があるが,いまだ明らかではない.今回われわれはFetus in fetuと診断され胎児期に成長を観察しえた症例を経験したので報告する.症例は27歳,1経妊1経産.27週3日に前医で胎児の胃泡横に腹部腫瘤を認め当院初診.内部に石灰化伴う充実性成分含む29×28×24mm大の嚢胞性腫瘤を認めた.29週0日超音波で精査施行.胎児は推定体重1312g,女児.胎児の腎動脈レベルに35×31×27mm大の嚢胞(画像左上)を認めた.その内部には胎動をうけて可動する浮遊した充実性腫瘤(左下)がみられた.腫瘤は形態上左右対称に見える部分があり下肢のようにも観察(右下)でき中心部石灰化は長管骨様(右上:FL?=4.8mm)にみられた.腹部腫瘤部分以外には形態異常を認めず,well beingであった.Fetus in fetuの疑いとして慎重に経過観察を開始,胎児発育は順調で次第に腫瘤内充実部分も発育認め,脊柱様の石灰化,上肢様石灰化も認めFetus in fetuの胎児診断となった.なお,腫瘤内胎児の臍帯は2血管(1動脈1静脈)で腫瘤内胎児に向かうパルス血流をみた.胎盤様構造は確認されず栄養血管は胎児の下行大動脈より分枝していた.腫瘤は63×57×51mmまで増大,Fetus in fetuのFLは31.2mm(20週0日相当)まで発育した.39週0日分娩誘発.3104g,女児,Ap.S. 9/9,Ua-pH 7.34で出生.出生後,腫瘤増大による消化管の通過障害も危惧されたために生後14日で摘出術施行.腫瘤壁(胎胞)は周囲との癒着が激しく腫瘤内部の胎児のみの摘出となった.摘出された胎児は重量100g,82×60×56mm,肉眼的には不完全な四肢様構造物や低隆起の頭部様構造物を認めた.組織学的にも皮膚,毛根,中枢神経,脂肪織,造血組織を伴う骨組織,軟骨,呼吸上皮などを認めFetus in fetuの診断と矛盾しないものであった.児は生後23日退院し,現在6か月で経過順調である.