Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(2)

(S627)

妊娠18週で流動する高輝度腸管像より胎児腸石症が疑われた1症例

Prenatal diagnosis of enterolithiasis at 18 weeks: Multiple foci of intraluminal calcified meconium within echogenic bowel

塩崎 有宏1, 米田 哲1, 草開 妙1, 伊東 雅美1, 伊藤 実香1, 米田 徳子1, 齋藤 滋1, 飯塚 崇2, 吉本 英生2

Arihiro SHIOZAKI1, Satoshi YONEDA1, Tae KUSABIRAKI1, Masami ITO1, Mika ITO1, Noriko YONEDA1, Shigeru SAITO1, Takashi IIZUKA2, Hideo YOSHIMOTO2

1富山大学産科婦人科, 2済生会高岡病院産婦人科

1Obstetrics and Gynecology, University of Toyama, 2Obstetrics and Gynecology, Saiseikai Takaoka Hospital

キーワード :

【はじめに】
胎児腸石症はまれであるが,腸管内を流動する斑点状の高輝度領域により出生前診断されることがある.今回妊娠18週の健診時に偶然胎児高輝度腸管像を認め,出生後に鎖肛と直腸尿道瘻と判明した症例を経験したので報告する.
【症例】
36歳,3回経妊1回経産(正常分娩1回,自然流産2回).今回自然妊娠し,妊娠18週5日,前医での妊婦健診時に,胎児腹腔内の膀胱の後面に高輝度腸管像が認められた.腸管壁は高輝度で,その内部には大きさ2-3mm,複数個の斑点状の高輝度領域があり,その腸管像の腸蠕動に伴い,「まりも」のように流動している像が観察できた.腸管高輝度病変の精査のため,当科紹介となった.来院時(18週6日),胎児の膀胱背側に2.5×0.8cmの高輝度な腸管壁像と,その内部に斑点状の高輝度領域を伴う嚢胞状腫瘤を認めるものの,腸管外の高輝度領域や腹水はなく,胎便性腹膜炎は否定的であった.その後外来で経過観察中,その高輝度腸管像の大きさは28週6日で3.2×1.2cm,32週5日で4.2×1.1cmと次第に増大していった.37週0日に施行した胎児MRIでは,膀胱背側に7.3×1.6cm,紡錘状で,T2強調画像でiso〜ややhighの構造物があり,内部にはややlowの斑点部分が認められ,その肛門側は盲端となっていた.推定体重は2382g(-1.0SD),NSTにてvariabilityの減少を認めたため,同日頸管拡張し,37週1日に分娩誘発にて経腟分娩となった.児には鎖肛(中間位,尿道直腸瘻),二分陰嚢が認められ,NICU入院となった.日齢1に逆行性膀胱造影を行ったところ,尿道と直腸との間に瘻孔(rectourethral fistula)が確認され,同日人工肛門造設術(横行結腸双孔式)が施行された.両側精巣は陰嚢内に認められ,尿道下裂の合併はなく,児の染色体は正常であった.日齢6の超音波でも膀胱背側に直径2.5cm,内部に斑点状の高輝度腸管像を認められ,腸石が残っている状態である.
【まとめ】
胎児の膀胱背側に拡張した高輝度腸管像と内部に流動する高輝度の斑点状腫瘤を認めた場合には,胎児腸石症を疑うことが大切である.また胎児腸石症の本質は尿酸アンモニウム塩で,尿とアンモニアから発生することから,胎児腸石症に合併する奇形(鎖肛や尿道直腸瘻など)の存在に留意して,周産期管理を行う必要がある.