Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(2)

(S627)

胎児期から疑うことができた低位鎖肛の一例

Prenatal diagnosis of imperforate anus low type: a case report

加地 剛1, 前田 和寿2, 高橋 洋平1, 中山 聡一朗1, 苛原 稔1, 石橋 広樹3

Takashi KAJI1, Kazuhisa MAEDA2, Youhei TAKAHASHI1, Soichiro NAKAYAMA1, Minoru IRAHARA1, Hiroki ISHIBASHI3

1徳島大学病院周産母子センター, 2四国こどもとおとなの医療センター産婦人科, 3徳島大学病院小児外科・小児内視鏡外科

1Obstetrics and Gynecology, Tokushima Universiy Hospital, 2Obstetrics and Gynecology, Shikoku Medical Center for Children and Adults, 3Pediatric Surgery and Pediatric Endoscopic Surgery, Tokushima Universiy Hospital

キーワード :

【目的】
鎖肛は1500〜5000出生に1人と比較的多く生後早期に治療が必要な疾患である.現在も胎児診断が困難な疾患の一つとされ,出生後にはじめて診断され新生児搬送となる場合が多い.従来胎児超音波検査では腸管拡張や腸管内部の点状高エコー像(石灰化)などの間接所見から鎖肛が疑われていたが,最近肛門管の有無を観察することでより正確な鎖肛の胎児診断が可能との報告がされている.当院でも肛門管の有無を観察することで胎児診断に至った2例を経験し昨年の本学会で報告した.しかしながら自験例を含め現在までの報告は高位鎖肛がほとんどであり,低位鎖肛の報告は稀である.今回我々は腸管内の点状高エコー像から鎖肛を疑い,肛門管の観察から低位鎖肛を疑うに至った症例を経験したので報告する.
【症例】
37歳 G1P1自然妊娠 妊娠25週0日超音波スクリーニングを目的に当科を紹介受診.右腎臓はやや小さく,前方に1.4cmの嚢胞を認めた.肛門管は正常に見えた.32週1日,直腸内に約1mmの点状高エコー像を1個認めたが,肛門管は正常と判断した.36週には直腸〜結腸内に多数の点状高エコー像を認めた.一方肛門管は描出されたが,通常に比し低形成様に見えた.妊娠38週5日妊娠高血圧症候群のため誘発分娩を行った.児は男児で2226g(-2.1SD),皮膚瘻を伴った低位鎖肛であることが判明した.日齢6に直腸肛門形成術が施行され,現在外来にて経過観察中である.腎臓の前方に認められた嚢胞については出生後も認められており今後CT等に精査予定とされている.
【結論】
今回は直腸内に点状高エコー像を認めたことから胎児期から鎖肛を疑い,肛門管がほぼ正常様であることから低位鎖肛を疑うことに至った.肛門管の観察だけからは正常と低位鎖肛の鑑別は難しく,特に妊娠中期では不可能であった.低位鎖肛では肛門管の一部は形成されており,肛門管の有無を見るだけではスクリーニングおよび診断は難しい可能性がある.