Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(2)

(S626)

超音波検査で非典型的な所見を示した胎便性腹膜炎の1例

A rare case of muconium peritonitis

宮崎 恭子, 長谷川 ゆり, 築山 尚史, 増﨑 雅子, 吉田 敦, 三浦 清徳, 増﨑 英明

Kyoko MIYAZAKI, Yuri HASEGAWA, Takashi TUKIYAMA, Masako MASUZAKI, Atsushi YOSHIDA, Kiyonori MIURA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University Hospital

キーワード :

【諸言】
胎便性腹膜炎は消化管穿孔により発症する無菌性腹膜炎である.特徴的な経腹超音波所見として,腹腔内石灰化,腸管拡張像,偽嚢胞の形成や胎児腹水を認め,診断される.今回,胎児腹水の経過観察中に突然の腹水増加を来し,胎便性腹膜炎と診断した一例を経験したので報告する.
【症例】
母親は23歳,1経産婦.妊娠28週に初めて胎児腹水を指摘された(図1).経腹超音波検査および胎児MRIで腸管拡張像や腹腔内の石灰化などの胎便性腹膜炎を疑うような所見は明らかではなかった.腸管の高輝度エコーを認めたため,母体サイトメガロウイルス(CMV)IgGおよびIgM抗体価を測定し,上昇していたため,胎児腹水は先天性CMV感染症によるものと考えられた.妊娠32週頃より羊水過多を認めたが,妊娠36週まで少量の胎児腹水は変化なく経過した.
妊娠37週3日(図2)の経腹超音波検査で胎児腹水の急激な増加,偽嚢胞の形成,腹腔内石灰化と思われる経腹超音波所見を認め,胎便性腹膜炎と診断した.小児科および小児外科とも協議の上,既往帝王切開のため妊娠37週5日で選択的帝王切開術を施行した.
児は2,932gの女児で,Apger scare 8点(1分)/9点(5分)であった.児は腹部膨満が強く,呼吸障害を認め,NICUへ入院した.腹腔穿刺で腸液が排出され,胎便性腹膜炎と診断された.同日緊急手術を施行したが,腸管は一塊となり,Lorimer分類の線維性癒着型の所見であった.腹腔内の洗浄およびドレーンを留置し,終了した.一方,児の尿や血液検査などから先天性CMV感染症は否定された.
【考察】
胎便性腹膜炎の経腹超音波検査所見は,様々な経過を示すが,これらの所見は経時的に変化するものであり,本症例のように胎児腹水の経過観察中に突然これらの所見が出現することは稀である.本症例は出生後の手術所見から長期にわたり腹腔内に炎症が起こっていたことが予測される.そして,初診時の腹水は腸管穿孔によるものであり,その後,穿孔部の被覆・閉鎖などにより,腹水の増減がなかったものと考えられた.妊娠37週で再度腸管穿孔が起こり,その時に初めて典型的な嚢胞型または汎発型の胎便性腹膜炎を発症したものと推察される.
【まとめ】
胎便性腹膜炎として典型的な所見に乏しく,診断に苦慮する症例を経験した.