Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児付属物/妊娠子宮

(S625)

切迫早産症例におけるAmniotic fluid sludgeの臨床的意義

Clinical significance of Amniotic fluid sludge in women in preterm labor

米田 徳子, 米田 哲, 伊東 雅美, 福田 香織, 伊藤 実香, 塩崎 有宏, 齋藤 滋

Noriko YONEDA, Satoshi YONEDA, Masami ITO, Kaori FUKUTA, Mika ITO, Arihiro SHIOZAKI, Shigeru SAITO

富山大学産科婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, University of Toyama

キーワード :

【目的】
Amniotic fluid(AF)Sludgeは,経腟超音波にて確認される内子宮口付近の羊水腔内に浮遊する高輝度集塊像であり,前期破水や自然早産との関連性が指摘されている.AF Sludgeの成分は,胎脂や細菌塊などの報告があるが詳細は不明で,早産の原因となる羊水中病原微生物に関する検討も少ない.本研究ではAF Sludgeと迅速高感度PCRによる病原微生物の検出をおこない,その臨床的意義について検討した.
【方法】
当院倫理委員会の承認を得て同意が得られた妊婦で,未破水切迫流早産または胎胞形成の診断で入院管理を要した88例を対象とした.入院時と入院後は週1回以上,頸管長とAF Sludge有無を経腟超音波で確認した.AF Sludgeは内子宮口付近に存在する高輝度の塊と認識される凝集体と定義した.経腹的に無菌的に羊水を採取し,独自に開発した偽陽性のない真核生物由来Taq polymeraseを用いた迅速高感度PCRにて,病原微生物(一般細菌,Ureaplasma,Mycoplasma,真菌)の検出をおこなった.また,子宮内炎症マーカーであるIL-8値をELISA法で測定し,早産マーカー(Tocolysis index,腟分泌物癌胎児性フィブロネクチン(fFN),母体白血球数,母体CRP値)と妊娠予後について検討した.
【成績】
妊娠32週未満に入院し,経腹的に羊水採取した88例を対象とした.分娩転帰は早産71例,正期産17例だった.AF Sludge陽性は早産71例中11例(15.5%)で,正期産例では認めなかった.
病原微生物検出率はAF Sludge陽性群36.4%,陰性群29.9%で差を認めなかった.
AF Sludge陽性群と陰性群の比較で絨毛膜羊膜炎(CAM: chorioamnionitis)2,3度陽性率(63.6%vs27.3%,p<0.05),羊水中IL-8値(ng/ml); 54.7vs5.9,p=0.05)はAF Sludge陽性群で有意に高値を示した.34週未満の早産率はAF Sludge陽性群が陰性群に比し有意に高率(90.9%vs53.2%,p<0.05)だった.34週未満の早産と各早産マーカーとの相関を単変量解析で検討したところ,AF Sludge陽性,PCR法による羊水中病原微生物陽性,羊水中IL-8値,腟分泌物中fFN,母体CRP値が有用であった.これらを多変量解析すると,羊水中病原微生物陽性(Odds: 4.58,95%信頼区間: 1.33-17.6,p=0.0154),腟分泌物中fFN(Odds: 25.79,95%信頼区間: 1.73-25.8,p=0.0045)が独立したマーカーであった.
【結論】
AF Sludge陽性例は子宮内炎症ならびに早産率が高いが,病原微生物の陽性率はAF Sludge陰性例と差を認めなかった.つまり,AF Sludgeは菌塊そのものではなく,胎脂や血腫塊を検出している可能性があると考えられた.以上より,早産の予測には,羊水中病原微生物の検出ならびに腟分泌物中fFNが重要であり,AF sludgeは参考所見にすぎないことが判明した.