Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児付属物/妊娠子宮

(S624)

臍帯下垂・脱出のrisk factorに関する検討

Analysis of risk factors in association with umbilical cord prolapse

長谷川 潤一1, 関沢 明彦1, 池田 智明2, 是澤 光彦3, 石渡 勇4, 川端 正清5, 木下 勝之6

Junichi HASEGAWA1, Akihiko SEKIZAWA1, Tomoaki IKEDA2, Mitsuhiko KORESAWA3, Isamu ISHIWATA4, Masakiyo KAWABATA5, Katsuyuki KINOSHITA6

1昭和大学産婦人科, 2三重大学産婦人科, 3河北総合病院産婦人科, 4石渡産婦人科産婦人科, 5同愛記念病院産婦人科, 6成城木下病院産婦人科

1Department of Obstetrics and Gynecology, Showa University School of Medicine, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Mie University School of Medicine, 3Department of Obstetrics and Gynecology, Kawakita General Hospital, 4Department of Obstetrics and Gynecology, Ishiwata Obstetrics and Gynecology Hospital, 5Department of Obstetrics and Gynecology, Doai Memorial Hospital, 6Department of Obstetrics and Gynecology, Seijo-Kinoshita Hospital

キーワード :

【目的】
本邦は,世界のなかでも低い周産期死亡率を誇るが,残された周産期死亡の要因の中には臍帯脱出などの臍帯異常が多く含まれる.臍帯下垂や脱出のrisk factorには,いくつか知られているものがあるが,それらの発生頻度が少ないことから,実際どの程度のリスクがあるのかは明らかでないものが多い.リスク要因の中でも超音波診断可能なものは多く,エビデンスとして臍帯脱出のリスク要因を明確にすることは,適切な妊娠・分娩管理に有用であると考えた.今回我々は,日本産婦人科医会・医療安全部会による日本全国の分娩施設を対象とした大規模なアンケート調査によって,臍帯脱出のリスク要因や診断に関して検討を行った.
【方法】
日本産婦人科医会・医療安全部会の調査として郵送によるアンケート調査を行った.日本産婦人科医会の有するデータベースにある分娩施設に,2007〜2011年に発生した臍帯下垂・脱出に関するアンケート調査を実施した.臍帯下垂・脱出症例群におけるリスク因子,発生状況や診断方法などの質問に対する回答をFaxで回収し,日本産婦人科学会・周産期委員会から報告されている2011年の日本人の妊娠・分娩に関する調査結果と比較検討した.なお,本検討は日本産婦人科医会の承認を得て行った.
【結果】
有効回答施設の総分娩数2,037,460例のうち,369例(0.018%)に臍帯下垂・脱出を認めた.それらのうち2.4%は子宮内胎児死亡,4.3%は新生児死亡,6.5%は生存したが後遺症を残した症例であった.臍帯下垂・脱出のリスク因子は,多胎(Odds ratio; OR 3.57,95%confidence interval; CI 2.60,4.90),非頭位(OR 4.67,95%CI 3.73,5.86),早産(OR 2.28,95%CI 1.83,2.83),前期破水(OR 3.84,95%CI 3.10,4.77),胎胞膨隆(OR 12.31,95%CI 9.00,16.85),羊水過多(OR 2.89,95%CI 1.49,5.61),2500g未満の児(OR 2.26,95%CI 1.84,2.79)であった.分娩中の単胎・頭位の症例のうち,13%は臍帯下垂の状態で診断されたが,35%は破水時,24%は人工破膜時,28%は破水からしばらく経ってから臍帯脱出と診断された.また,臍帯下垂症例の78%は,超音波検査によって診断されていたが,臍帯脱出症例の63%は,腟外への臍帯脱出や内診などで診断されており,超音波検査によって診断されていたのは9%に満たなかった.
【結論】
本検討は,臍帯下垂や脱出のリスク要因に関する既存の報告の中で最も大きい研究である.臍帯脱出のハイリスク例では,頻回な超音波検査,特に破膜や破水直後の確認が重要であると考えられた.未だ,臍帯脱出症例の予後は悪く,破水前の臍帯下垂の状態での超音波診断することと,適切な対応をすることによって,臍帯脱出に関連した胎児機能不全や周産期死亡を減ずることが可能であると考えられた.