Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児付属物/妊娠子宮

(S623)

“Overlapped placentas”を呈した二絨毛膜二羊膜双胎の一例

“Overlapped placentas” of dichorionic diamnionic twin pregnancy

田中 啓, 宮崎 典子, 松島 実穂, 柳下 玲子, 谷垣 伸治, 岩下 光利

Kei TANAKA, Noriko MIYAZAKI, Miho MATSUSHIMA, Reiko YAGISHITA, Shinji TANIGAKI, Mitsutoshi IWASHITA

杏林大学産科婦人科学教室

Obstetrics & Gynecology, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
二絨毛膜二羊膜(DD)双胎の胎盤の発育や癒合は,それぞれの胚の着床部位によって様々である.出生前に超音波断層法検査にて一児の胎盤が,もう一児の胎盤に覆い重なっている(overlapped)所見を示し,分娩後に特殊な形態の癒合胎盤であることがわかったDD双胎の一例を経験したので報告する.
【症例報告】
38歳,初産,IVF-ETにて妊娠成立.
妊娠11週に経腟超音波断層法にてλサインを認め,DD双胎と診断された.
妊娠20週の経腹超音波断層法にて一児のFGRが指摘され,妊娠21週に一児(smaller twin)の胎盤が,もう一児(larger twin)の胎盤の上に覆い重なっている所見を認めた.胎児は推定体重482g(94%)/ 318g(14%),羊水量は正常であった.超音波パルスドプラー法にて臍帯動脈血流・中大脳動脈血流に異常波形を認めなかった.その後も胎盤の位置関係は変化することなく経過した.
妊娠35週4日 母体適応(妊娠高血圧腎症)にて帝王切開で分娩となった.新生児はⅠ児:2527g,女児,Apgスコア8/9,Ⅱ児:1310g,男児,Apgスコア9/10であった.胎盤は癒合胎盤で,910g,24.5×23.0×4.0cm大,Ⅰ児目:23.0×12.0×2.5cm 臍帯中央付着,Ⅱ児:17.5×14.0×2.0cm 臍帯辺縁付着であり,膜性は2絨毛膜2羊膜が確認された.肉眼所見では,Ⅱ児の胎盤の一部が子宮壁に接することなく分離膜上に膜状に広がっていた.子宮壁側以外の部分での両胎盤の癒合は認めなかった.顕微鏡所見では,胎盤の一部がT-zoneにむかって陥入し,分離膜間にも絨毛組織を認めた.
【考察】
出生前に一児の胎盤が,もう一児の胎盤に覆い重なっている超音波断層法所見を示したDD双胎の一例を経験した.分娩後の検討により,胎盤の一部(絨毛)が分離膜間にも存在する,特殊な癒合胎盤であり,子宮内では分離膜が片側へ倒れていたために胎盤が覆い重なっている所見を得たものと推測される.このような形態の胎盤の成因や臨床的意義は明らかでないが,胎盤面積の減少や臍帯付着部異常を伴う可能性があると思われる.