Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
経会陰走査

(S622)

コンベックス型探触子による第3・第4度会陰裂傷の診断・修復評価

Postpartum evaluation of the sphincter by convex probe in primipara after vaginal delivery and following repair of 3rd & 4th degree laceration

土肥 聡, 田中 政彰, 山崎 玲奈, 野村 一人, 打出 喜義, 藤原 浩

Satoshi DOHI, Masaaki TANAKA, Rena YAMAZAKI, Kazuhito NOMURA, Yoshiki UCHIDE, Hiroshi FUJIWARA

金沢大学附属病院産科婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Kanazawa University Hospital

キーワード :

【目的】
分娩時の肛門括約筋損傷は便失禁の原因の1つに挙げられる.経腟分娩の0.36から8.4%に会陰裂傷が認められ,初産の35%に肉眼で確認できない括約筋損傷があるといわれている.括約筋評価には直腸診が頻用されるが,容易な画像評価方法はなく,一方で3D経会陰超音波やMRIといった画像評価は有用だが,費用対効果比が高く,日本の分娩施設の6割を占める産婦人科診療所で採用できる検査とは言い難い.日本の産婦人科診療所に必ず採用されているコンベックス型探触子超音波装置を用いて第3度及び第4度会陰裂傷の診断,会陰縫合による裂傷の修復評価を検討した.
【対象と方法】
対象は,初産婦で経腟分娩となった40例である.持田シーメンス:ソノビスタMSC,ALOKA:SSD2200,Prosound2のコンベックス型探触子を使用した.裂傷と肛門との間,水平より45から90度でカバーを装着したプローブを置き,肛門括約筋の断層リングを確認,そのリングに歪みや断裂があれば3度裂傷以上と評価した.全症例に対して最後に直腸診を行い,括約筋収縮を評価,3度裂傷以上に関しては会陰縫合後の超音波評価および直腸診を行った.
【結果】
40症例中,1度裂傷は6症例,2度裂傷は32症例,3度裂傷は1症例,4度裂傷は1症例であった.肛門括約筋の断層リングは,1度および2度裂傷において均一な厚みがあり,欠損を認めなかったが,3度裂傷は不均一な厚みで一部欠損部があり,4度裂傷は直腸裂傷部に一致した粟粒状の特徴的なhigh echogenic lesionを認めた.
なお,3度・4度裂傷に対する外科的修復後には,均一な厚みで欠損部のない括約筋の断層リングを認めた.直腸診による評価と超音波による括約筋の断層リングの評価は全症例で一致した.
【結論】
新たな器材を購入することなく,産婦人科医が使い慣れているコンベックス型探触子を利用して肛門括約筋の損傷程度を客観的に評価できるだけでなく,再現性があり,簡便である.また3度裂傷以上の会陰縫合による治療効果を確認することができることから,会陰裂傷の診断のみならず,治療評価をする際にコンベックス型探触子による超音波検査が直腸診を補完する可能性があると考えられる.