Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
経会陰走査

(S622)

経会陰超音波検査が診断に有用であった4症例

Four cases of recto-vaginal fistels / anal sphincter defect diagnosed by perineal ultrasound

後藤 美希, 藤川 朋奈, 藤森 啓太, 飯塚 奈緒, 市川 麻祐子, 市瀬 茉里, 樋口 紗恵子, 手塚 真紀, 坂巻 健, 小林 浩一

Miki GOTO, Tomona FUJIKAWA, Keita FUJIMORI, Nao IIZUKA, Mayuko ICHIKAWA, Mari ICHINOSE, Saeko HIGUCHI, Maki TEZUKA, Ken SAKAMAKI, Koichi KOBAYASHI

社会保険中央総合病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Social Insurance Chuo General Hospital

キーワード :

【諸言】
直腸腟瘻は婦人科や大腸肛門科の手術,分娩,炎症性腸疾患など,様々な原因で発生することが知られている.また分娩による肛門括約筋の損傷は2割を超えるとも報告されており,将来の便失禁などの潜在性リスク因子となる可能性を含め,その診断の臨床意義が高まっている.直腸腟瘻や肛門括約筋の損傷は,従来,産婦人科医による視診,触診や,外科医による経直腸ラジアルスキャンを用いて診断を行ってきたが,近年,経会陰超音波検査が行われるようになり,産婦人科医が比較的簡便に画像評価をすることが可能になってきた.今回,経会陰超音波検査が診断の一助となった症例ならびに画像所見を報告する.
【症例1】
53歳1経妊1経産,潰瘍性大腸炎のため,41歳で大腸亜全摘,人工肛門造設,43歳時に直腸腟瘻閉鎖術施行するも,帯下異常を主訴に当科を通院していた.視診,触診,ゾンデ診で瘻孔は確認できず,経過観察としていたが,52歳時に経会陰超音波検査を施行,肛門管の12時方向で内,外肛門括約筋の損傷を認め(図1),更に3.8mm大の瘻孔を確認した(図2).
【症例2】
36歳0経妊0経産,潰瘍性大腸炎のため,13歳で大腸亜全摘,術後より帯下に便汁が混じることを自覚していた.今回,妊娠17週の健診時に経会陰超音波検査を施行し,瘻孔を確認,更に会陰部をプローベで圧迫→解除することで,腸内容物が膣内に漏出している様子を観察することができた.
【症例3】
64歳2経妊2経産,61歳時に腟癌に対し,広汎子宮全摘術,腟全摘術施行,術後に直腸腟瘻を認めたため,現在,瘻孔閉鎖術に先立ち,人工肛門造設中である.腟が狭小であり,腟鏡挿入困難であるが,経会陰超音波検査で瘻孔を確認,現在瘻孔のサイズや腸内容物の漏出の程度をフォロー中である.
【症例4】
34歳1経妊1経産,吸引分娩で出産,分娩数ヵ月後より時折便失禁を認めるも,診察上創部は異常なしと言われていた.今回,当院分娩希望あり妊娠34週で当院初診,初診時に経会陰超音波検査を施行,TUIを用いて肛門管に垂直方向にスライス画像を作成し,内,外肛門括約筋損傷と診断,便失禁の原因と考えられた.
【結語】
視診や触診では診断が困難であった,直腸腟瘻,肛門括約筋損傷の症例において,経会陰超音波検査が診断に有用であった.更に,会陰部を圧迫→解除したり,TUIを用いることが,診断の一助になると思われた.