Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
経会陰走査

(S621)

分娩第二期における経会陰超音波断層法と分娩所要時間に関する検討

Transperineal ultrasound and delivery time in the second stage of labor

米谷 直人, 村田 将春, 中村 康平, 高岡 幸, 太田 志代, 笹原 淳, 林 周作, 石井 桂介, 光田 信明

Naoto YONETANI, Masaharu MURATA, Kouhei NAKAMURA, Sachi TAKAOKA, Shiyo OTA, Jun SASAHARA, Shusaku HAYASHI, Keisuke ISHII, Nobuaki MITSUDA

大阪府立母子保健総合医療センター産科

Obstetrics, Osaka Medical Center And Research Institute For Maternal And Child Health

キーワード :

【目的】
近年,経会陰超音波断層法を用いて分娩の進行を客観的に評価し,分娩転帰を予測しようとする試みがなされており,特に児頭下降を評価するパラメータとしてAngle of Progression(AoP)(恥骨長軸と恥骨下端から児頭先端への接線との角度)の有用性が報告されている.当センターでは2013年9月から試験的に分娩時経会陰超音波検査を導入している.今回,我々は子宮口全開大後のAoPと児娩出までの所要時間との関連について検討した.
【対象と方法】
2013年10月から11月の2か月間に,当センターにて正期産で単胎経腟分娩に至った症例を対象とした.内診で子宮口全開大と診断された時点で経会陰超音波検査を行い,3D volume dataを採取した.分娩後にsonoVCAD labor(GE Healthcare)を用いてAoPを算出し,経会陰超音波検査から児娩出までの所要時間との関連について後方視的に検討した.分娩第2期の管理としては,原則的に子宮口全開大後2時間の時点で分娩の進行を評価し,微弱陣痛による分娩遷延にはオキシトシン投与による陣痛促進を行った.胎児機能不全と診断された症例は急速遂娩の方針とし,立ち会った医師の判断により緊急帝王切開もしくは器械分娩が選択された.統計解析にはJMP software version11(SAS Institute Inc. USA)を使用し,内診による児頭下降度及びAoPの各々と,児娩出までの所要時間との相関の有無を単回帰分析を用いて解析した.また,AoPと児娩出までの所要時間が60分以上との関連について多重ロジスティック回帰分析を用いて解析し,ROC曲線からAoPのカットオフ値を算出した.
【結果】
108例の対象に経会陰超音波を施行した.AoPが200°を超えており明らかに分娩直前と考えられた5例を除外した103例を対象として以下の解析を行った.母体背景としては,分娩時年齢の中央値は33(19〜45)歳,73.4%が初産であった.経会陰超音波検査から児娩出までの所要時間の中央値は40.5(3〜407)分であった.陣痛誘発・促進の頻度は39.7%,器械分娩の頻度は17.3%であった.内診による児頭下降度と児娩出までの所要時間との間には初産経産ともに相関を認めなかった(初産:|r|=0.20,経産:|r|=0.22)(r:相関係数).AoPと児娩出までの所要時間との間には,経産婦においては相関を認めなかった(|r|=0.16)が,初産婦においては相関が認められた(|r|=0.38,p=0.0009).AoPが10°大きくなるにつれ,児娩出までに60分以上要する割合が有意に低かった(p=0.0008,Adjusted OR=0.60;95%CI:0.44−0.80).また,ROC曲線(AUC=0.83)から算出した児娩出までの所要時間が60分未満となるAoPのカットオフ値は150°(感度:81%,特異度:81%)であった.
【結論】
子宮口全開大時のAoPは内診による児頭下降度評価に比べて,児娩出までの時間と相関し,児娩出までの所要時間を予測する上で有用となる可能性が示唆された.