Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児心臓・循環

(S615)

心房-下行大動脈距離を用いたTAPVDの胎児スクリーニング

Fetal screening of TAPVD with the distance between Atrium and Dessending Aorta

川滝 元良

Motoyoshi KAWATAKI

神奈川県立こども医療センター新生児科

Neonatology, Kanagawa Children’s Medical Center

キーワード :

【背景】
TAPVDの一部は出生直後に緊急で開心術が必要となる重症心疾患であるが,現在の胎児診断率は非常に低率であり,簡単で効率の良いスクリーニング法が求められている.今回,我々は,心房-下行大動脈間距離(ADL)がTAPVDでは正常に比べて大きいことに注目した.ADLがTAPVDのスクリーニングとして役立つかどうかを検討したので報告する.
【対象】
最近10年間に当院で胎児診断したTAPVD32例および正常例21例を対象とした.TAPVDの分類は1a型13例,1b型10例,2b型3例3型5例であった.TAPVD単独例は10例,複雑心奇形合併例は22例であった.肺静脈狭窄なしは15例,肺静脈狭窄ありは16例であった.複数回胎児心エコーを行っている症例は最後の心エコーでのみ測定した.
【方法】
電子媒体に保存されていた動画,STIC,3D,静止画を用いて,卵円孔が観察できる四腔断面上でADLを測定した.測定はすべて一人の検者が行った.在胎週数は20週以後であり,平均 31週であった.
【結果】
正常例のADLは2.3±0.8mmであり,週数によらず一定の値を取った.TAPVD1a型:7.1±2.5mm, 1b型:7.4±1.4mm 2b型:8.5±2.7mm 3型:6.5±1.2mmであった.TAPVDで肺静脈狭窄なし群が7.0±2.4mm,TAPVDで肺静脈狭窄あり群が7.4±1.6mmであった.以上の測定結果より以下の結論が得られた.1)TAPVDは正常に比べて有意にADLが大である.2)TAPVDの病型によるADLの差はなかった.3)肺静脈狭窄の有無によるADLの差を認めなかった.
【考案】
ADLは正常例と比べてTAPVDで明らかに高値を取っており,ほとんどオーバーラップしていなかった.ADLの測定は極めてシンプルであり,技術的には非常に容易である.TAPVDの病型や肺静脈狭窄による差を認めなかったことからも,すべてのTAPVDのスクリーニングに役立つと考えられる.
【limitation】
今回の測定のほとんどは,電子媒体で保存されていた動画,STIC,3D,静止画を用いて測定したものである.断面のわずか違いやカーソルの当て方により測定結果は大きく変化した.今回の結果にはそのことから生じる誤差を含む可能性がある.
【結語】
ADLは胎児スクリーニングが難しいとされているTAPVDのスクリーニングに極めて有用であると考えられる.