Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
スクリーニング・診療

(S612)

かかりつけ医における超音波検査の有用性と課題を当内科診療所の癌診断例より考察する

Consider the usefulness and problem of ultrasonography in the generalist than cancer examination cases of our internal medicine medical office

倉光 智之

Tomoyuki KURAMITSU

くらみつ内科クリニック内科

Internal Medicine, Kuramitsu Clinic

キーワード :

【目的】
超音波検査は,無侵襲で簡便で診断領域が広く,しかも診断能が高く,かかりつけ医が最も習得すべき検査の一つである.一方で,内科診療所では超音波検査は短時間で簡単に行われることが多く,目的臓器により診断検査法を決めつけがちになる.今回,当診療所で診断した癌症例を検討し,消化器内科診療所における超音波検査の有用性と課題を考える.
【方法】
対象は,2006年9月より2013年11月まで当診療所で診断した癌患者173例(新規癌156例,再発肝癌15例,原発不明転移肝癌2例)である.再発肝癌は,治療後3年以上無再発期間があり,かつ初回部位以外に新規発生した場合とした.画像検査は,超音波検査,上下部内視鏡検査は診療所で行い,CT,MRI,FDG-PET検査は関連病院に依頼した.同期間の診療所での検査数は腹部超音波10,154例(ソナゾイド造影検査223例を含む),甲状腺超音波177例,上部内視鏡6,439例,下部内視鏡2,192例で,超音波検査および内視鏡検査はすべて同一医師1人で行った.超音波検査機械は東芝メディカル社のXario,Aplio 400を用いた.
【成績】
1)診断した癌の領域は消化器147例,呼吸器6例,泌尿器10例,婦人系4例,体表6例(甲状腺4,悪性リンパ腫2)であった.発見法は内視鏡95例,超音波54例,CT・MRI 14例,PET 1例,胸部Xp 3例,採血・尿6例であった.2)超音波検査の領域別癌診断に占める割合は,消化器27.2%(40/147),呼吸器16.6%(1/6),泌尿器40.0%(4/10),婦人系100%(4/4),体表83.3%(5/6)と超音波検査は全領域の癌診断に役だっていた.胃大腸癌に限っては超音波検査の診断に占める割合は3.4%(3/87)と低く,発見例はすべて進行癌であった.
【結論】
腹部超音波検査は無侵襲で癌発見に関してすべての領域において役立っている.近年,超音波検査は消化管疾患の診断能の高さが評価されているが,超音波検査の消化管診断学が浸透しておらず,実臨床で消化管まで観察する習慣を持った医師は少ないと感じる.当地域では超音波指導医による中核病院の超音波技師に対する教育が行き届いており,健康診断の腹部超音波で普段観察しない臓器や描出困難な病変が指摘され二次検診に診療所を受診する症例を経験する.そのような患者の受診は診療所医師に超音波検査の診断領域の範囲の広さと,診断能の高さを改めて知らせることになり,かかりつけ医の超音波検査能力の向上に寄与する.地域の超音波技師の超音波能力の向上は地域かかりつけ医の超音波診断能力の向上に直結する.