Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
スクリーニング・診療

(S611)

消化器内科クリニックにおける腹部症状症例に対する腹部超音波検査の有用性

The usefulness of abdominal ultrasonography for patients who complained of abdominal symptoms in Gastroenterology clinic

村越 三衣1, 豊田 英樹2

Mie MURAKOSHI1, Hideki TOYODA2

1ハッピー胃腸クリニック超音波検査室, 2ハッピー胃腸クリニック消化器内科

1Ultrasonography Suite, Happy-GI-Clinic, 2Gastroenterological Medicine, Happy-GI-Clinic

キーワード :

【はじめに】
当院の腹部超音波検査(腹部US)は,院長が診察と並行して施行してきたが,2013年5月より超音波検査士(臨床検査技師)を超音波検査室に配置し,二人体制でUSを施行している.
【目的】
消化器内科診療を専門とするクリニックでの腹部症状に対する診療における腹部USの有用性ならびに超音波検査士の意義を検討する.
【方法】
2012年6月(超音波検査士配置前,A群)および2013年6月(配置後,B群)の各々1ヶ月間に腹痛等腹部症状(急性の嘔吐・下痢のみなどの典型的な胃腸炎の症例は含まない)を主訴に受診され,腹部USを施行した症例を比較検討する.使用機種:A群はアロカ社製prosound SSD3500SV,B群は東芝社製Aplio 300である.
【結果】
全症例数はA群 75例,B群 94例であった.US所見から消化管疾患が腹部症状の原因と考えられた症例はA群 25例(33.3%),B群 62例(66%)であった.さらなる精査にて消化管が腹部症状の原因と考えられた症例はA群 17例(22.7%),B群 16例(17%)であった.US所見から消化管疾患が腹部症状の原因と考えられた症例の内訳は細菌性腸炎(A群:4例 16%,B群: 11例 17.7%(O157感染性腸炎4例を含む)),小腸炎(A群:4例 16%,B群:14例 22.6%),虚血性大腸炎(A群:1例 4%,B群:3例 4.8%),虫垂炎(A群:1例 4%,B群:1例 1.6%),大腸憩室炎(A群: 0例 0%,B:2例 3.2%),腫瘍(A:1例 4%,B:2例 3.2%),イレウス(A:1例 4%,B:1例 1.6%),胃・十二指腸の壁肥厚(A:1例 4%,B:4例 6.5%),アニサキス症(A:0例 0%,B:1例 1.6%),大腸ガス貯留が目立つ症例(A:3例 12%,B:7例 11.3%),その他(A:9例 36%,B:16例 25.8%)であった.O157感染性腸炎4例のうち2例は心窩部痛が主訴であり,症状からは細菌性腸炎を疑うことは困難であったがUSにて的確に早期診断できた.大腸ガス貯留が目立つ症例では,その腹部症状の改善に大建中湯,クエン酸モサプリドなど消化管運動機能改善剤,酸化マグネシウムなどが有効であり投薬の指標としてUS所見が有用であった.腹部USにて胃・十二指腸の壁肥厚を認める場合は,消化性潰瘍の可能性を考慮し速やかな内視鏡検査が望ましいが,内視鏡施行が難しい状況でも制酸剤を投与することにより対応可能となった.
消化管以外に腹部症状の原因が認められた症例はA群 2例(2.7%),B群 1例(1.1%)と僅かであった.
【まとめ】
超音波検査士をスタッフに加えてUSを二人体制とすることで,腹部症状症例に対してUSを施行しやすくなったためUS施行症例数が増加した.A群に比べB群でUSにて消化管疾患と診断された症例が増加しているが,時間的に余裕ができ詳細な観察が可能になったことと,超音波装置の性能特性が反映されているものと推測された.実地診療における腹部症状の原因の大部分は消化管に起因することが今回の検討にて明らかとなった.実地診療にて腹部USをより有効に活用するためには,消化管超音波診断学の普及がきわめて重要であると考えられた.