Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
スクリーニング・診療

(S611)

腹部スクリーニング超音波検査の意義について

Clinical significance of screening ultrasound of entire abdmen

安田 慈1, 乙部 克彦1, 高橋 健一1, 橋本 智子1, 今吉 由美1, 辻 望1, 髙木 優1, 川地 俊明1, 熊田 卓2, 多田 俊史2

Shigeru YASUDA1, Katsuhiko OTOBE1, Kenichi TAKAHASHI1, Satoko HASHIMOTO1, Yumi IMAYOSHI1, Nozomi TSUJI1, Yu TAKAGI1, Toshiaki KAWACHI1, Takashi KUMADA2, Toshifumi TADA2

1大垣市民病院形態診断室, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Resarch, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
当院における腹部スクリーニング超音波検査は,上腹部はもちろんのこと下腹部や消化管を含め腹腔内全体の観察を行っている.一方,血尿や混濁尿,腰背部痛や下腹部痛,排尿障害などで泌尿器領域の疾患が強く疑われた場合,腎・膀胱の観察に重点をおいた検査依頼も併存していた.しかし,腎・膀胱の観察のみ行われていた患者に,肝癌や膵癌などの重要疾患が早期に発見できなかった症例を経験した.これを期に,腹部スクリーニング超音波検査の意義を見直し,過去1年間に腹部超音波検査が施行されていない患者には腎・膀胱の検査依頼であっても腹腔内全体の観察を行い,有効な結果が得られたので報告する.
【対象】
対象は,2013年4月から10月に腎・膀胱の検査依頼で超音波検査が施行され,過去1年間に腹部スクリーニング超音波が施行されていない978例(男性708名,女性270名,平均年齢60.9歳)である.
【方法】
超音波所見を日本消化器がん検診学会が作成した腹部超音波検診マニュアル(案)のカテゴリー分類を参照し,肝,胆嚢・胆道,膵,脾,その他の部位についてカテゴリー3以上の所見の拾い上げを行った.また胆石についてはカテゴリー分類では2に該当するが急性腹症の原因となるため拾い上げ対象とし,消化管疾患についても拾い上げを行った.また,超音波検査で指摘できず,他検査で拾い上げられた所見についても調査した.
【結果】
拾い上げられた所見は,肝臓:充実性病変8例であり,その内訳は肝細胞癌2例,S状結腸癌術後の転移性肝腫瘍1例,血管腫1例であった.残りの4例は過去に確定診断がなされていた良性腫瘍であった.肝内胆管拡張は1例あり精査で肝門部胆管癌と診断された.
胆嚢・胆道:びまん性壁肥厚3例,限局性壁肥厚7例,5mm以上10mm未満の有茎性腫瘤像19例,総胆管拡張1例が認められ,カテゴリー2である胆石は26例認めた.
膵臓:低エコー腫瘤像1例,嚢胞性病変2例,主膵管拡張1例あり,精査の結果低エコー腫瘤像は膵臓癌であった.嚢胞性病変,主膵管拡張は精査されず経過観察された.
脾臓:カテゴリー3以上に該当する所見認めなかった.
その他:傍大動脈〜両側総腸骨動脈周囲にリンパ節の腫大を認めた1例は精査の結果前立腺癌リンパ節転移であった.一方,拾い上げられなかった所見は,膵臓癌1例,虫垂炎1例であった.
【考察】
今回の結果で偶発的に指摘された所見にはカテゴリー4以上の重要所見が多く見られた.これは腎・膀胱の観察に固執した検査方法では検出できない所見であり,腹部全体を観察する腹部スクリーニングの意義は大きいと考える.日常的に検者が腹腔内を幅広く観察する意識が重要であると思われた.
【結語】
腹腔内全体を観察することにより初めて重要疾患が検出されることがあり,腹部スクリーニング超音波検査は,下腹部・消化管を含め広く観察することが望ましい.