Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
スクリーニング・診療

(S610)

当院人間ドック超音波検査の事後指導と腹部超音波がん検診基準のカテゴリー分類の比較

Relationship between Ultrasonographic diagnosis and Category

若杉 聡1, 小宮 雅明2, 石田 秀明3, 藤田 あゆみ2, 新井 悠太2, 鵜澤 綾奈2, 石井 勝2, 内海 良太2, 小田 悠太2, 坂巻 梓帆2

Satoshi WAKASUGI1, Masaaki KOMIYA2, Hideaki ISHIDA3, Ayumi FUJITA2, Yuuta ARAI2, Ayana UZAWA2, Masaru ISHII2, Ryouta UTSUMI2, Yuuta ODA2, Azuho SAKAMAKI2

1亀田総合病院消化器診断科, 2亀田総合病院超音波検査室, 3秋田赤十字病院消化器科

1Department of Digestive Diagnosis, Kameda Medical Center Hospital, 2Ultrasonography Room, Kameda Medical Center Hospital, 3Department of Gasroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
当院人間ドックの超音波検査は,他施設と比較して,要精査率が高く,検査時間が長い.その原因を日本消化器がん検診学会の腹部超音波がん検診基準から検討すると,初回指摘の胆嚢腺筋腫症や肝血管腫を要精査判定していたことが原因だった.今回は,がん検診基準から精査すべき症例を要精査判定しているかを検討した.
【対象と方法】
対象は2009年5月から2010年3月の期間に当院人間ドックで腹部超音波検査を行った6348例である.これら全体を腹部超音波がん検診基準で,カテゴリー分類した.カテゴリー3,4,5(以下カテゴリーをCとする)を要精査とした場合,これらの症例がどのように事後判定されたかを検討した.C3,C4,C5症例で,過去に精査され良性と診断された症例はC3´,C4´,C5´とした.また,精査されていなくても,数年の検査で大きさ,形態に変化がなく,明らかに良性と思われた症例もC3´,C4´,C5´とした.事後判定は,異常なしをA判定,軽度の異常をB判定,1年後経過観察をC判定,要精査加療をG判定とした.
【結果】
6348例中C1は952例,C2は4032例,C3は478例,C3´は647例,C4は100例,C4´は136例,C5は3例だった.要精査対象であるC3-5の症例は581例だった.これら581例中G判定は216例,C判定は188例,B判定は157例だった.カテゴリー分類から精査すべき581例中,要精査のG判定とされた症例は216例(37%)に過ぎなかった.B判定とされた157例の大部分は脾腫の症例だった.C判定とされた188例中93例は肝疾患で,その大部分は血管腫だった.C判定のうち55例は胆嚢疾患で,カテゴリーダウンできない胆嚢腺筋腫症や胆嚢壁肥厚症例だった.
【考察】
我々は,日本消化器がん検診学会から発表された腹部超音波がん検診基準から過去の成績を再検討してきた.要精査判定され,実際に精査された症例の結果から,精査すべきでないと思われた症例は全体の約20%になることが判明した.これらの大部分は胆嚢腺筋腫症や肝血管腫の初回指摘例で,がん検診基準から検討すると,C2であった.当院人間ドックの超音波検査にがん検診基準を積極的に導入することで,不要な精査症例を減少させることがわかった.一方,がん検診基準から精査すべき症例を精査していない場合もあると思われたため,今回短期間だが,対象期間の症例の画像を見直し,カテゴリー分類した.その結果,C3-5症例を精査すべき症例とすると,その37%しか精査判定されていなかった.精査判定されなかった症例の多くが脾腫だった.これらは当院の事後判定基準で脾腫は,血液検査から血液疾患や進行肝疾患がないと思われた症例は精査しないことに起因していると考えた.小血管腫も多く精査されていなかった.血管腫のカテゴリーダウンの基準であるmarginal strong echo,chameleon sign,wax and wane signなどがなくても,10mm未満の類円形高エコー結節を精査していないことが主因と思われた.
【結語】
腹部超音波がん検診基準から要精査とすべき症例の大半は精査されていなかった.脾腫や典型的所見のない肝血管腫,胆嚢腺筋腫症などを精査すべきかどうか,今後の問題である.