Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
その他2

(S608)

副腎腫瘤の超音波検査所見の検討

study of urutrasound examination of adrenal tumor

小田 悠太1, 小宮 雅明1, 石井 勝1, 内海 良太1, 坂巻 梓帆1, 石井 那奈1, 高橋 麻里子1, 野口 瑞恵1, 若杉 聡2, 石田 秀明3

Yuta ODA1, Masaaki KOMIYA1, Masaru ISHII1, Ryouta UTUMI1, Azuho SAKAMAKI1, Nana ISHII1, Mariko TAKAHASHI1, Mizue NOGUCHI1, Satoshi WAKASUGI2, Hideaki ISHIDA3

1亀田総合病院超音波検査室, 2亀田総合病院消化器診断科, 3秋田赤十字病院秋田赤十字病院超音波センター

1Divison of Uitrasonographic examination, Kameda medical center Hospital, 2Divison of Digestiv Diagnosis Department of Internal Medicine, Kameda medical center Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
副腎腫瘤の超音波検査所見から,腹部超音波がん検診基準の妥当性を検討した.
【対象】
2003年1月から2013年11月の期間に当院で手術された副腎腫瘤41例(褐色細胞腫11例,腺腫25例,癌の転移癌5例)のうち,術前に超音波検査が行われ,腫瘤を評価できた16例17病変(右8病変,左9病変)である.
【方法】
病変の部位,大きさ,形態,内部エコーレベル,内部エコーパターン,境界,後方エコー,嚢胞変性の有無を検討した.その上で,日本消化器がん検診学会腹部超音波がん検診基準(以下がん検診基準)の「その他の臓器の腫瘤像」をカテゴリー4とすることの妥当性を検討した.
【結果】
病変の内訳は,褐色細胞腫7例8病変,腺腫6例6病変,転移3例3病変(肺原発2病変,肝臓原発1病変)であった.年齢は32歳〜74歳だった.性別は,男性5例5病変,女性11例12病変だった.褐色細胞腫は39歳〜74歳で男性3例3病変,女性は4例5病変だった.境界明瞭平滑な類円形低エコー像で内部均一なものが3例3病変存在した.1例1病変は境界不明瞭な類円形低エコー像で内部均一であった.残る4病変中3病変に嚢胞変性を認めた.嚢胞変性のない1病変は内部エコーが不均一だった.大きさ40mm以上の病変は3病変だった.そのうち2病変に嚢胞変性を認めた.腺腫は32歳〜67歳で,男性1例1病変,女性5例5病変だった.6病変中4病変が,境界明瞭平滑な類円形低エコー像で内部均一だった.残り2病変は,ともに内部不均一だった.そのうち1病変は嚢胞変性を伴う40mm以上の病変だった.転移は62歳〜72歳で男性1例1病変,女性2例2病変だった.3病変中1病変が境界明瞭平滑な類円形低エコー像で内部均一だった.残り2病変中1病変は形態が分葉形で,他の1病変は内部が不均一だった.副腎転移に40mm以上の病変はなかった.嚢胞変性を伴うものも存在しなかった.副腎腫瘍17病変中8病変は,内部エコー均一で境界明瞭な類円形腫瘍で,鑑別上の特徴的所見がなかった.病変が大きい症例ほど内部エ
コーが不均一になり,嚢胞変性を伴う傾向にあった.
【考察】
今回の検討では,副腎腫瘍の半数近くに質的診断,悪性度診断が困難と思われる症例が存在した.副腎腫瘍は,初回指摘の際は,超音波所見に関わらず,精査すべきと考える.副腎腫瘍は,腹部超音波がん検診基準で「その他の臓器の腹腔内腫瘤像」として扱われ,カテゴリー4となる.この扱いが妥当であるかを,褐色細胞腫の症例で検討してきた.その結果,多くの症例が境界明瞭平滑で,内部均一な低エコーの類円形病変であることが判明した.褐色細胞腫は,初回指摘でも超音波検査所見に関わらず一度は精査する必要があると考え,カテゴリー4が妥当だと判断した.今回は,腺腫,転移の症例も合わせて検討したが,同様の結果だった.初回指摘の副腎腫瘍をカテゴリー4とすることが妥当と考えた.
【結語】
副腎腫瘍の診断と治療を的確にする点においても,腹部超音波がん検診基準の,「その他の臓器の腹腔内腫瘤像はカテゴリー4」という扱いは,正しいと考える.