Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
その他1

(S606)

鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアにおける術前超音波検査による評価

Evaluation of Preoperative Ultrasonography for the Inguinal hernia

中村 雅美1, 位藤 俊一2, 水野 均2, 飯干 泰彦2, 山村 憲幸2, 西谷 暁子2, 藤井 仁2, 今里 光伸2, 藤井 亮知2, 伊豆蔵 正明2

Masami NAKAMURA1, Toshikazu ITO2, Hitoshi MIZUNO2, Yasuhiko IIBOSHI2, Noriyuki YAMAURA2, Akiko NISHITANI2, Hitoshi FUJII2, Mitunobu IMASATO2, Ryochi FUJII2, Masaaki IZUKURA2

1地方独立行政法人りんくう総合医療センター検査科, 2地方独立行政法人りんくう総合医療センター外科

1Clinical Laboratory, Rinku General Medical Center, 2Surgery, Rinku General Medical Center

キーワード :

【はじめに】
鼠径ヘルニアは小児と中高年にピークを有し,成人では根治には手術が原則である.鼠径ヘルニアは仰臥位で腹腔内へ還納する症例も多くみられ,CTでは診断が困難な場合も多い.超音波検査ではヘルニアが脱出しやすい体位を任意にとることが可能である.今回,超音波検査によりヘルニアの術前評価の可能性を検討したので報告する.
【対象】
2012年4月〜2013年3月に鼠径部の腫大を主訴に受診し,超音波検査を施行した128例.男性108例,女性21例.平均年齢70歳(33〜91歳).
【方法】
使用装置は東芝社製Aplio770A.探触子は日本ヘルニア研究会のヘルニア分類にもとづき,綿貫ら1)の下腹壁動静脈を指標とする分類を参考に,立位にて患側より検査開始.鼠径靭帯,下腹壁動静脈とヘルニア門の位置とサイズを中心に観察.患側脱出内容の有無と健側の異常の有無を検索後仰臥位にて観察.脱出腸管が存在する場合には,脱出腸管の血流評価とともに腹腔内の消化管の異常所見の有無を確認した.
【結果】
理学所見にて鼠径および大腿ヘルニアと診断された128例.右側59例,左側35例,両側34例.片側性では外鼠径ヘルニア72例,内鼠径ヘルニア14例,内外鼠径ヘルニア併存型2例,大腿ヘルニア6例.併存型では内外鼠径ヘルニア2例.片側性では正診率は外鼠径ヘルニア65/72(90%),内鼠径ヘルニア13/14(93%),大腿ヘルニア4/6(67%).併存型0/2(0%).両側性ヘルニア21/34(64%).両側性や併存型,大腿ヘルニアでは正診率は低下した.脱出容量の少ない症例や鼠径靭帯の認識困難例,下腹壁動静脈の追跡・ヘルニア嚢の腹腔内への連続性の確認が不十分であった症例では正診率が低下した.
【症例1】
55歳女性.右鼠径部の違和感にて来院.右鼠径部に嚢胞状腫瘤を認めた.ヘルニア門は鼠径靭帯の背側に認め,ヘルニア嚢内に脂肪織と盲端の消化管を認めた.脱出腸管を腹腔内へ追跡すると回盲部へ連続し虫垂と診断した.仰臥位でも還納せず虫垂脱出の大腿ヘルニアと診断された(図1).
【結語】
鼠径ヘルニア,大腿ヘルニアの診断および術前評価に関し超音波検査は有用であると考えられた.
【参考文献】
1)綿貫 裕,貝阿弥 裕香子,松井 孝ほか :鼠径ヘルニアにおける術前超音波検査の有用性.超音波検査技術 2007;vol.32 No.6 613-620