Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓5

(S599)

超音波検査にて経過が追えた限局性脂肪沈着の3例

Ultrasonography observation of three case of foca fatty chenge

中川 真理1, 會澤 信弘2, 吉田 昌弘3, 東浦 晶子3, 中野 智景2, 3, 橋本 健二2, 3, 田中 弘教2, 3, 飯島 尋子2, 3, 西口 修平2

Mari NAKAGAWA1, Nobuhiro AIZAWA2, Masahiro YOSHIDA3, Akiko HIGASHIURA3, Chikage NAKANO2, 3, Kenji HASHIMOTO2, 3, Hironori TANAKA2, 3, Hiroko IIJIMA2, 3, Shuhei NISHIGUCHI2

1兵庫医科大学卒後臨床研修センター, 2兵庫医科大学肝胆膵内科, 3兵庫医科大学超音波センター

1Post-Graduate training center, Hyogo college of Medicine, 2Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Department of Internal Medicine, Hyogo college of Medicine, 3Ultrasound Imaging Center, Hyogo college of Medicine

キーワード :

【はじめに】
限局性脂肪沈着は診断が容易な場合も多いが,脂肪成分を有する肝腫瘍との鑑別が問題となる場合や,多発性で転移性肝腫瘍との鑑別が問題となる場合がある.
今回,限局性脂肪沈着と診断した3症例について超音波所見について検討したので報告する.
【症例1】
42歳・女性
【既往歴】
特記無し.
H23年10月,検診の腹部CTにて肝SOL指摘され当院紹介受診となった.腹部超音波検査のBモードでは前区域に50mm大の不整形の高エコー領域を認め,Sonazoid造影の動脈相,門脈優位相共にisovascularで,Kupffer相でもisointensityであった.限局性脂肪沈着と考え経過観察をしたところ,6ヶ月後の腹部超音波検査では高エコー領域は消失していた.
【症例2】
68歳・女性
【既往歴】
H21年7月,腹部超音波検査でS4に20mm大の境界やや不明瞭で内部均一な高エコーSOLを認めた.Sonazoid造影の動脈相,門脈優位相共にisovascularで,Kupffer相でもisointensityであった.限局性脂肪沈着と考え経過観察を行っているが,腹部超音波検査上変化は認めていない.
【症例3】
44歳・女性
【既往歴】
糖尿病(無治療)
平成22年8月27日に右下腹部痛にて入院となり,腹部CT,大腸内視鏡検査にて回盲部炎(虚血性小腸炎疑い)と診断し,抗菌薬投与にて改善した.この時の腹部CTで肝腫瘤を認めたため精査を行った.MRIではS4に30mm,15mm,,S7に10mmのSOLを認め,T1WI in phaseで軽度高信号,out of phaseで低信号を呈した.EOB造影で一部軽度不均一な造影効果を認めたが,全体的に早期相,後期相共に造影効果は乏しく,肝細胞相で低信号を呈した.腹部超音波検査では脂肪肝を認め,腫瘍部はBモードでは不明瞭で,Sonazoid造影の動脈相,門脈優位相共にhypovascularで,Kupffer相でdefectとなった.脂肪成分を含む乏血性腫瘍であり,確定診断のため,肝腫瘍生検を施行した.腫瘍部は限局性に高度の脂肪変性を伴う領域で腫瘍細胞は認めなかった.その後,経過観察にて肝腫瘤は縮小を認め,H23年2月に施行した腹部MRI,腹部超音波検査では病変はほぼ消失していた.病理組織結果,臨床経過から限局性脂肪沈着と考えられた.
【考察】
限局性脂肪沈着の好発部位は肝左葉内側区域の背側,胆嚢周囲,肝鎌状間膜付着部と言われている.これらの部位の門脈以外の流入血管(右胃静脈,胆嚢静脈,膵,胃幽門,十二指腸,Sappey’s veinなど)の存在が関与していると考えられている.これらの流入血は門脈本幹からの血液と比較してインスリンに代表されるホルモンや栄養分の濃度に差異があると考えられ,流入血成分の差が脂肪沈着の不均一を生じる一因と考えられている.今回の症例ではいずれも経過中に消失または不変であり限局性脂肪沈着と診断した.このうち症例2,3は高発部位に発生していた.
超音波検査のBモードでは高エコーに描出されることが多いが,症例3では不明瞭であった.また,症例1,2ではSonazoid造影の動脈相,門脈優位相共にisovascularで,Kupffer相でもisointensityであったが,症例3では動脈相,門脈優位相は共にhypovascularであったが,Kupffer相でdefectを呈した.これらの違いは背景肝の脂肪化の有無が関与していると考えられた.また,組織学的に検討できたのは1例だけではあるが,脂肪化の程度が非常に高度な場合は,介在する肝細胞の減少がみられ,Kupffer細胞の機能的低下も関与している為とと考えられた.
【結語】
脂肪肝を背景に限局性脂肪沈着をきたした場合,Sonazoid造影超音波Kupffer相でdefectとなる可能性があり留意すべきと考えられた.