Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓5

(S599)

胆管炎を契機に発現し,前後の肝実質血流を造影超音波で検討し得た限局性脂肪化の一例

Case report:Characteristic microcirculation of the liver parenchyma with focal fatty deposition due to cholangitis observed by CEUS

工藤 岳秀1, 丸山 憲一1, 松清 靖2, 佐藤 綾2, 岸本 有為2, 池原 孝2, 篠原 正夫2, 渡邉 学2, 五十嵐 良典2, 住野 泰清2

Takahide KUDOU1, Ken-ichi MARUYAMA1, Yasushi MATSUKIYO2, Aya SATOU2, Yuui KISHIMOTO2, Takashi IKEHARA2, Masao SHINOHARA2, Manabu WATANABE2, Yoshinori IGARASHI2, Yasukiyo SUMINO2

1東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査室, 2東邦大学医療センター大森病院消化器内科

1Ultrasound Labo., Toho-university Ohmori Medical Center, 2Gastroenterology and Hapatology, Toho-university Ohmori Medical Center

キーワード :

59歳の女性.本年2月,夕食後に強い心窩部痛が出現し近医受診.膵炎の診断で入院し治療を受けたが改善得られず当院へ転院.AST 330,ALT 189,Alp 801,GGTP 501,Amy 1843,P-Amy 1762,WBC 34800,USでは肝内胆管・総胆管の軽度拡張と脂肪肝の所見,CTではGradeⅠの急性膵炎と脂肪肝の所見が得られた.急性膵炎,胆管炎と診断し,ERCPによる膵胆道の減圧を試みたが十二指腸乳頭部の炎症浮腫が強く挿管不可.急遽経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を設置し,以後徐々に病状改善を得た.しかし,PTGBDを閉鎖すると発熱・腹痛・肝胆道系および膵の酵素上昇など胆管炎・膵炎の症状所見が出現するため抜去できず.留置したまま抗生剤適宜内服で経過を見ていたが,さらにPTGBD由来と思われる胆管炎を繰り返すようになり,同年7月,外科的に胆嚢摘出術施行.以後胆道系および膵の状態は落ち着いたが,肝障害の改善が得られず,9月に精査を施行した.AST 38,ALT 29,Alp 465,GGTP 93,Amy 71,P-Amy 28,WBC 2500,USでは肝門部を中心に両葉にまたがる境界明瞭均質な高エコー領域が認められた.ソナゾイド造影超音波:本年2月の検査では特別な所見なし.9月は肝表側の低エコー領域は門脈のarrival-time以前に実質が染影され,いわゆる動脈化所見を呈し,中枢側の高エコー領域は動脈化をきたしていなかった.肝生検所見:高エコー領域は高度の脂肪化と軽度の線維化,低エコー領域は胆管上皮の変性,グリソン鞘のリンパ球性炎症(軽度)および線維性拡大が認められ,長期に続く胆管炎に矛盾しない所見を呈していた.
【結語】
低エコー領域は胆管炎によって門脈血流障害・灌流の動脈化をきたし,低栄養となった結果肝の脂肪が抜けたものと推測され,肝の循環・栄養・脂肪化のメカニズムを考えるに極めて示唆に富む症例と考え報告する.