Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
造影超音波検査3

(S597)

造影超音波検査による,肝臓および脾臓の損傷部の評価

Blunt hepatic and splenic trauma: evaluation with contrast-enhanced sonography

吉元 和彦1, 西小野 昭人2

Kazuhiko YOSHIMOTO1, Akito NISHIONO2

1熊本赤十字病院小児外科, 2熊本赤十字病院放射線科

1Pediatric surgery, Kumamoto red cross hospital, 2Radiology, Kumamoto red cross hospital

キーワード :

【はじめに】
当院では従来,小児腹部臓器損傷の初回診断には全例で造影CTを用い,経時的な評価にも造影CTを用いていた.しかし,2012年4月からは肝損傷および脾臓損傷のみについては,放射線被曝を避ける目的から,初回診断のみ造影CTを用い,以後の経時的な評価には造影超音波検査(造影US)を用いている.
【目的】
肝損傷および脾損傷の治癒過程について明らかにする.
【方法】
小児の肝損傷および脾損傷を造影USを用いて経時的に観察することで,損傷部位の変化について検証する.受傷当日についてはCTと比較する.
【結果】
①脾臓,肝臓での共通所見:受傷当日の造影CTでは損傷部位は比較的均一な造影不良域として描出されるが,造影USでは内部の造影が不均一であることが多かった.また,受傷2,3日後には,初回の造影USで造影不良であった部分の一部は周囲の組織と同様に造影される現象が確認された.②肝臓のみに見られた所見:肝臓では受傷当日または翌日の造影USで損傷部位に接した実質が造影早期から周囲の正常組織よりも強く造影される現象が見られた.また,経時的に観察すると造影不良域は徐々に縮小し,最終的には線状に変化していった.③脾臓のみに見られた所見:脾臓では,受傷3日目程度までは受傷部位が徐々に収縮していったが,その後はほとんど変化がなくなり,7日目程度でほぼ固定した.
【考察】
造影USによる観察により,造影CTで均一に損傷していると考えていた損傷部が均一ではないことが分かった.また,症例によっては血流が一時的に低下しているのみであり,数日で回復したことから,造影CTでの造影不流域は全てが損傷していたわけではなく,可逆的な微小循環障害であったこと示唆された.また,肝臓では受傷早期から損傷部周囲に血流亢進が見られ,さらに経時的に損傷部位が正常組織によって置換されていくような現象が見られた.肝臓では損傷部位周囲の組織が再生することで損傷部位を圧排し,画像的に損傷部位が確認できにくくなっていくものと考えた.一方,脾臓では,初期に組織の再生を思わせる現象は確認できなかったことから,損傷部位および周囲の正常組織は急激な変化はせず,徐々に収縮していくものと考えた.
【まとめ】
造影USは損傷部を造影CTよりも詳細に評価でき,さらに放射線被曝がないことから経時的に繰り返すことができるという利点があると考えた.また造影USの経時的な評価により肝損傷と脾損傷では治癒過程に違いがあることが示唆された.