Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
造影超音波検査3

(S596)

新しい造影超音波定量解析ソフトウェアの開発—MADARA indexを用いた膵癌診断−

A newly developed software for quantification of contrast-enhanced ultrasonography -the diagnosis of pancreatic carcinoma using MADARA index-

今津 博雄1, 加藤 智弘1, 田尻 久雄2

Hiroo IMAZU1, Tomohiro KATO1, Hisao TAJIRI2

1東京慈恵会医科大学内視鏡科, 2東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科

1Department of Endoscopy, The Jikei University School of Medicine, 2Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, The Jikei University School of Medicine

キーワード :

【背景】
肝,胆膵,乳腺領域の腫瘍性病変の良悪性診断,抗癌剤治療効果の判定などにおける造影超音波断層法(CE-US)の有用性が報告されている.近年,第二世代超音波造影剤,振動子,観測装置の発達により胆膵領域の画像診断では最も局所診断能が高いとされる超音波内視鏡(EUS)でも,造影超音波断層法(CE-EUS)が可能となった.しかし,CE-US(CE-EUS)ではvisual interpretationが術者に依存し,術者間の捉え方が一致しないなどの問題点も指摘されている.我々は,造影剤の分布パターン(造影均一性)を定量化する画像解析ソフトウェア(MADARA:Inspeedia Inc.刈谷,愛知)を開発した.
【目的】
画像診断やFNAによる細胞・病理診断でも困難とされる慢性膵炎(CP)と膵癌(PC)の鑑別におけるMADARAを用いたCE-EUSの有用性について後ろ向きに検討する.
【方法】
PCの疑いでCE-EUSが行われ,EUS下穿刺吸引細胞診もしくは外科標本により確定診断がなされたCPおよびPC症例を解析対象とした.MADARAはビデオ上の任意の領域に任意の数のセルに分割したROIを設定(分割セル数はm×nで任意に設定可能),隣接しあうセル領域でgray scaleの違いが発生すると(gray scale,差の程度も任意に設定可能),ROI内のその総数を各frame rateで計算し,その経時的な変化をグラフ化,任意時間内のセル間に発生したgray scaleの差の総数の平均値を算出する(MADARA index),つまり造影剤分布の均一性を数値化できるソフトである.CE-EUSにはGF-UCT260(Olympus Medical Systems)およびProsoundα10(日立アロカメディカル)を用い,ソナゾイド0.015ml/kgを静注した.CE-EUSの動画をソフトに読み込み,腫瘤内にROIを設定,今回はROI内のセル数を100に,gray scaleは5段階で評価,2段階以上の差があるとMADARAとしてカウントするように設定した.造影剤静注から1分間のMADARA indexを算出した.
【結果】
50例(CP14例,PC36例)が解析対象となった.CP症例の平均MADARA indexは6.3であったのに対し,PC症例では15.8とCP症例に比べ有意にPC症例で高かった(p<0.001).これはCP症例では比較的均一に造影剤が取り込まれるのに対し,PC症例では不均一に取り込まれることを意味しており,カットオフ値8.96以上で,MADARA indexによるPCを検出する感度/特異度/AUCは94.4%/100%/0.93であった.従来の造影定量化ソフトウェアであるTime intensity curve(TIC)を用いた輝度増幅度(peak値−base値)の解析では,CP20.3,PC14.9とPCで有意に低かったが(p=0.01),カットオフ値18.75以下で輝度増幅度によるPCを検出する感度/特異度/AUCは70%/64.2%/0.74で,PC診断においてTIC解析よりMADARA indexの診断精度が高い傾向にあった.2例のPCでMADARA indexがカットオフ値以下となったが,いずれも造影剤をほとんど取り込まないためMADARA indexが低値となった症例であり,目視で容易に診断可能で,TICにおける輝度増幅度は5.29以下と低値であった.現在のところ,MADARA indexと輝度増幅度の組み合わせでは,MADARA index8.96以上(造影剤を不均一に取り込む症例),もしくはMADARA indexが低値で,かつ輝度増幅度5.29以下(ほとんど造影されない症例)をPCと定義すると,すべてのCPとPCを確実に鑑別できることになる.
【結語】
困難とされてきた慢性膵炎と膵癌の鑑別診断において造影超音波定量解析ソフトMADARAを用いたCE-EUSは,これまでの診断精度を向上させる可能性がある.また,膵癌以外の疾患に対するCE-USへの応用も期待できる.