Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
造影超音波検査3

(S594)

術中造影超音波検査が切除範囲決定に有用であった高分化型肝細胞癌の1例

A case of hepatocellular carcinoma which showed usefulness of intraoperative contrast-enhanced ultrasonography to decide the extent of resection

猪川 祥邦, 杉本 博行, 野本 周嗣, 菱田 光洋, 神田 光郎, 山田 豪, 藤井 努, 小寺 泰弘

Yoshikuni INOKAWA, Hiroyuki SUGIMOTO, Shuji NOMOTO, Mitsuhiro HISHIDA, Mitsuro KANDA, Suguru YAMADA, Tsutomu FUJII, Yasuhiro KODERA

名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学

Gastroenterological Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【症例】
64歳男性.
【既往歴】
血友病A,C型肝硬変.
【現病歴】
他院で上記フォロー中に肝腫瘤を指摘され当院消化器内科に紹介受診となった.
【画像所見】
CTで肝S3/4に約1cm大の動脈相で高吸収,門脈相で低吸収となる領域を指摘され,EOB-MRIでは同部に肝細胞相で低信号を示す結節を認めた.体外式造影超音波検査では病変の同定はできなかった.
【術前診断】
肝S3/4の表面近くに位置する単発約1cmの肝細胞癌であると診断,当科に手術依頼となった.
【手術】
開腹して観察するも肉眼的に病変は同定できず触診上も同定できなかった.GE社のLOGIQ E9の9Lプローブを用いた術中超音波検査によっても同定できなかった.そこで術中造影超音波検査を施行したところ,後血管相において約1cm大の低エコー結節を同定することができ,肝表面にマーキングを施行して肝部分切除術が可能となった.切除後標本に割面を入れ,切除検体内に病変が含まれていることを確認した.
【摘出標本所見】
肉眼所見では黄褐色,軟で多結節癒合型,1.2cm大の単発腫瘍を認め,病理組織学的検査により高分化型肝細胞癌,Stage Iと診断された.
【術後経過】
経過良好で術後第14病日に退院され,術後1年3ヶ月現在無再発生存中である.
【考察】
本症例は1.2cm大で単発の肝細胞癌であったが体外式造影超音波検査で描出できなかったため,ラジオ波焼灼術の適応とはならず外科的切除を要する症例であった.術中の視触診および術中超音波検査では病変を同定できず,造影超音波検査によってのみ病変の同定が可能であった.
術中視触診,超音波検査で描出不可能な腫瘍の場合,解剖学的切除であれば切除可能だが,部分切除の場合には切除範囲決定が困難である.その場合,RVSやV-naviを用いることも選択肢となりうるが術野での位置合わせには熟練を要する.造影超音波は簡便であるが,肝表面に近い腫瘍の描出が困難な場合もある.今回は体外式の高周波プローブを用い同定可能であった.また,現在は腹腔鏡下肝切除術が普及しはじめており,より超音波検査による位置確認は重要となっている.今後は腹腔鏡下に使用可能で造影対応,高周波プローブの普及が必要と考えられる.
【結語】
小型で肝表面近くにあり,高周波プローブによる造影超音波検査が切除範囲決定に有用であった肝細胞癌の1例を経験した.