Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
血流診断2

(S583)

造影超音波で検出できた微細肝内動脈-静脈短絡

Intrahepatic small arteriovenous shunts:contrast-enhanced US findings

石田 秀明1, 渡部 多佳子1, 長沼 裕子2, 大山 葉子3, 伊藤 恵子4, 須田 亜衣子4, 櫻庭 里美5, 神馬 孝悦5, 渡辺 大輔6, 小川 眞広7

Hideaki ISHIDA1, Takako WATANABE1, Hiroko NAGANUMA2, Yoko OHYAMA3, Keiko ITOU4, Aiko SUDA4, Satomi SAKURABA5, Kouetu JINBA5, Daisuke WATANABE6, Masahiro OGAWA7

1秋田赤十字病院超音波センター, 2市立横手病院消化器科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4仙北組合総合病院臨床検査科, 5能代山本医師会病院臨床検査科, 6能代山本医師会病院消化器科, 7駿河台日本大学病院消化器肝臓内科

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Medical laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Senboku Kumiai General Hospital, 5Department of Medical Laboratory, Noshiro Yamamoto Medical Association Hospital, 6Department of Gastroenterology, Noshiro Yamamoto Medical Association Hospital, 7Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Surugadai Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝内血管系(動脈,門脈,静脈)間に形成される短絡は多彩であるが多くの場合,ドプラで診断可能である.しかし,それら短絡の診断の中で動脈-肝静脈間の場合診断に苦慮することがある.それは,主として,肝動脈も肝静脈もFFT波形上拍動を有し,拍動の有無が診断根拠となりえないからである.さらに,短絡が微小な場合カラードプラで走行を確認困難な場合が多い.今回我々はこの問題解決を考える上で示唆に富む3例を経験したので報告する.使用装置:アロカ社製:alpha-10,東芝社製:AplioXG,500,Xario.超音波造影剤:Sonazoid(第一三共社).なお造影手順は通常の肝腫瘍のそれに準じた.
【症例1】
70歳代女性.C型慢性経過観察例.超音波上肝内に腫瘍や門脈血栓なし.肝外に異常所見なし.肝左葉門脈臍部に肝動脈がやや目立つ印象あるも近傍の門脈や肝静脈はFFT波形上問題なし.造影超音波では肝実質は均一に染まった.早期血管相から肝動脈が濃染され次いで左肝動脈から近接した左肝静脈内に(滴が垂れるように)造影剤がパラパラと粒状に流出していった.微細な動脈-肝静脈の所見と考えられた.
【症例2】
60歳代女性.多発肝血管腫例.超音波上肝内に1-3cmの血管腫を多数認めた.血管腫-血管腫間の肝実質に多数の微細脈管がみられた.造影超音波では,早期血管相から肝動脈が濃染され次いで右肝動脈から近接した肝静脈内に造影剤が早期に流出していった.微細な動脈-肝静脈の所見と考えられた.
【症例3】
40歳代女性.脂肪肝例.超音波上肝内に腫瘍や門脈血栓なし.肝外に異常所見なし.肝左葉門脈臍部に肝動脈がやや目立つ印象あるも近傍の門脈や肝静脈はFFT波形上問題なし.造影超音波では肝実質は均一に染まった.早期血管相から肝動脈が濃染され次いで左肝動脈から近接した左肝静脈内に(滴が垂れるように)造影剤がパラパラと粒状に流出していった.微細な動脈-肝静脈の所見と考えられた.
【まとめと考察】
肝内短絡の診断は通常,(1)カラードプラで血管の走行を観察し,(2)必要に応じFFT波形で血流状態をチェックすることが基本となる.比較的径の大きく走行が規則的な門脈が関与する短絡に関しては(1)で多くの場合確診可能となる.また動脈が絡んだ場合でも径が大きい場合短絡部周囲にtissue vibrationがみられ短絡の存在を強く疑うことが可能となる.しかし,短絡が小さい場合は,今回の3例のようにこれらの所見を欠くことになることが多い.一方,動脈-門脈短絡の診断にはFFT波形の解析が有効なことが多い.それは,ほぼ定常流を呈する肝内門脈内に拍動性の流れが混入するためであるが,短絡が小さい場合は,今回の3例のようにこれらの所見を欠くことになる.これらの限界を考えた場合,今回提示した3例の造影超音波所見は注目に値する.全て早期血管相で肝内動脈の染まりに合わせ肝静脈内に造影剤が粒状に流出し,これのみで微細肝内動脈-静脈短絡と診断可能であった.この様な報告はこれまでまれでありその意味で報告する価値があると思われた.