Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
携帯超音波

(S579)

肝障害症例における,超小型超音波診断装置(Vscan)の有用性について

Usefulness of Vscan in Patients with Liver Dysfunction

植竹 知津, 中元 明裕, 須田 季晋, 北濱 彰博, 草野 祐実, 関山 達彦, 寺内 厳織, 豊田 紘二, 玉野 正也

Chizu UETAKE, Akihiro NAKAMOTO, Toshikuni SUDA, Akihiro KITAHAMA, Yumi KUSANO, Tatsuhiko SEKIYAMA, Itsuo TERAUCHI, Koji TOYODA, Masaya TAMANO

獨協医科大学越谷病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【目的】
手のひらサイズの超小型超音波診断装置(GE社製Vscan)は,在宅医療や救急医療の場において幅広く使用されているが,消化器領域における有用性について検討した報告は少ない.本臨床研究は,肝障害症例の診断におけるVscanの有用性について検討することを目的とした.
【対象と方法】
肝障害で当科を受診し,その後に臨床的に診断が確定した症例のうち,汎用腹部超音波診断装置にてその所見が良好に描出された117例を対象とした.対象の内訳は,びまん性肝疾患109例,閉塞性黄疸8例であった.びまん性肝疾患の原因は,B型肝炎5例,C型肝炎36例,脂肪肝(アルコール性,非アルコール性を含む)40例,その他28例であった.また,今回のびまん性肝障害には急性肝炎は含まれていなかった.汎用型超音波診断装置はGE社製LOGIQ E9を用い,通常の観察に引き続きVscanを用いて同所見を観察し,得られた結果を以下のように分類して検討に用いた.観察良:Vscanのみでも所見の描出ができ,診断が可能なもの.観察可:所見の描出は可能だが,Vscanのみでは診断不能であり,通常のLOGIQ E9の所見と合わせて診断が可能なもの.観察不可:Vscanで病変の描出が不能なもの.これらの分類は日本超音波医学会認定超音波指導医1名を含む消化器内科医師3名で行った.本臨床研究は獨協医科大学越谷病院の生命倫理委員会の承認を得て,患者への充分な説明と同意のもとに行われた.
【結果】
Vscanで観察良と判定されたのはびまん性肝疾患の29/109例(27%)であり,その29例全てが脂肪肝であった.慢性肝炎・肝硬変においてはVscanでは良の判定は困難であり,全てが可・不可の評価に留まった.閉塞性黄疸で観察良と判定されたものは7/8例(88%)であった.
【考察】
Vscanはセクタ型探触子であるため,体表近くの病変や肝表面,肝辺縁の観察が不充分であった.また画質のクオリティーから肝実質の均一性・不均一性を評価することができなかった.このため,びまん性肝疾患における線維化進展度の推測は困難であったが,脂肪肝における肝腎コントラストの描出は良好であった.一方で,今回は全例に施行しておらず充分な検討はできていないが,腹水,脾腫,側副血行路の描出は比較的良好であり,これらを組み合わせることで肝硬変の診断能は向上するものと推測された.胆道閉塞の診断能はきわめて良好であったが,これはVscanにカラードプラが装備されているため,画質のクオリティーが低くても拡張した胆管と門脈の鑑別が比較的容易であったためと思われた.
【結論】
Vscanは肝障害症例から脂肪肝と閉塞性黄疸を拾い上げることは充分に可能であるが,慢性肝炎や肝硬変の進展度評価は困難である.臨床の現場ではこれらの特性を理解したうえでVscanを的確に使用することが重要である.