Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
携帯超音波

(S578)

携帯超音波(V scan)を用いた研修医の超音波教育(2)

Vscan: A good tool for sonographic education

石田 秀明1, 渡部 多佳子1, 長沼 裕子2, 大山 葉子3, 中川 正康4, 斉藤 崇5, 黒田 聖仁6, 河合 徹7

Hideaki ISHIDA1, Takako WATANABE1, Hiroko NAGANUMA2, Youko OHYAMA3, Masayasu NAKAGAWA4, Takashi SAITOU5, Masahito KURODA6, Toru KAWAI7

1秋田赤十字病院超音波センター, 2市立横手病院消化器科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4市立秋田総合病院循環器科, 5秋田組合総合病院循環器科, 6福島赤十字病院消化器科, 7男鹿みなと市民病院消化器科

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Red Cross Hospital, 4Department of Cardiology, Akita City Hospital, 5Department of Cardiology, Akita Kumiai General Hospital, 6Department of Gastroenterology, Fukushima Red Cross Hospital, 7Department of Gastroenterology, Oga Minato Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々はこれまで本学会で携帯超音波(Vscan(GE Healthcare社)以下,Vsc)の有用性について,特にVscの機動力について,更にVscが研修医の超音波教育に有用であることを報告してきた.しかし,その度にVscの画質が一定レベル以下でまだ実用性に問題がある,という異論が出た.今回このVscの画質について研修医の意見をまとめたところ興味深い結果が得られたので報告する.
【方法】
各地で行っている研修医対象の講習会でVscの利用法について解説し,その際アや挙手でVscの画質に対する若手医師の意見を次の項目を通して検討した.初期研修医のみを対象にした講習会(5箇所,32名)と初期研修医を含む講習会(7箇所)に参加した初期研修医(24名)を対象に,Vscに関し,a)すでにVscを使った経験があるか?b)Vscは臨床の場で役に立つと思うか?c)Vscを使いこなす超音波技術を身につけたいか?d)近い将来Vscを使える医師と使えない医師では診療の機動力に差が出ると思うか?(これは以前報告した項目と同じ内容)e)普段から超音波検査に慣れておかないとVscは使えない,と思うか?.f)超音波に興味があるか?g)Vscの画質は十分か?この画質に関しては,口演者(HI)が以前とった何枚か動画を実際にじっくりみせ,(1)高級機と同程度,(2)高級機より劣るが十分,(3)画質は不十分,(4)よく分からない,に大別し解答してもらった.また上記項目a)〜g)について付記する意見も合わせきいた.
【結果】
a)(12/56: 21.4%), b)(56/56. 100%), c)(56/56, 100%), d)(56/56, 100%), e)(56/56: 100%), f)(42/56: 75%)であった.なお,g)に関しては,(1)0/56(0%),(2)42/56(75%),(3)3/56(5.4%),(4)11/56(19.6%),(3)(4)と答えた研修医はf)で超音波の興味がない,と答えた研修医と一致した.なお,a)で経験あり,と回答した研修医全員が,その場の指導医が携帯超音波は画質が悪くて使えない,と言われたこと,や,講習会での提示画像との極端な差,を付記した.
【まとめと考察】
数年前口演者(HI)は携帯超音波(V scan)を用いた研修医の超音波教育という演題名で最初の口演を行い,(自発性はないが自分が遅れて目立つのはいやな無気力世代の若手医師の超音波教育はむしろ携帯超音波装置を使えないことの不都合さ(機動力の無さ,など)を前面に出して恐怖感から超音波検査に向かわせるのも一計である,と報告した.今回の数年後の研修医の反応は,b)〜e)に関してはほぼ同じ状態であるが,a)は大幅に改善し救急の場などで装置を少し使ったことがある研修医が増えてきた.しかし同時に,超音波検査がほとんどできない医師がいい加減に携帯超音波装置を扱い超音波検査の質を下げていること(自分の未熟さを装置の性能や画質の責任に転化する)も浮き彫りになってきた.今後若手医師の超音波教育を充実させるには超音波専門医以外の医師の教育や他学会との連携などを充実させなければならない,と思われた.若手の超音波教育は学問的ではないが学会にとっての重要課題と考えまとめてみた.