Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓4

(S577)

輝度ヒストグラムによる脂肪肝の数量化の試み

Trial of quantification of the fatty liver by an echo-intensity histogram

平岡 諦, 高田 みか子, 北村 次男, 大野 秀樹

Akira HIRAOKA, Mikako TAKADA, Tsugio KITAMURA, Hideki OHNO

健保連大阪中央病院健康管理センター

Health Manegament Center, Ken-po-Ren Osaka Central Hospital

キーワード :

【目的】
脂肪肝の定量化のためにエコー信号の統計処理を利用したAcoustic Structure Quantification(ASQ)法が開発されているが,我々は,より簡便な輝度ヒストグラムによる数量化を試みた.これまでの輝度ヒストグラムの応用は,知る限り谷口らの肝腎コントラストの評価(Jpn J Med Ultrasonics, 1991)以外には成功していない.
【対象】
人間ドック・健康診断における腹部超音波検査の受診者.
【方法】
Prosound F75を使用し,脂肪肝を評価するB mode画像で,可及的,技術的エラーのない場所に1平方cm(33×33=1,089ピクセル)のROI(range of interest)を設定し輝度ヒストグラムを得た.バラつきを少なくするため,機器の設定は一定にし,ROIの設定はスペースが十分で目的外の構造物が入り込まず,フォーカス点から大きく外れず,肝腎の比較は同じ深度とした.その後,算出される指標(L;最多頻度の輝度,MN;平均輝度,M;最多頻度のピクセル数,SD;輝度の標準偏差)につき,脂肪肝群(FL)と正常肝群(NL)で比較検討した(脂肪肝の「brightness」はL,MNの増大を,「べったり感」はMの増大,SDの減少を来たすと予想される).深部減衰の検討では右肋弓下より肝右葉ドームを最大限に観察できるB mode画像で,探触子に近い浅部(肝表面)(upper:u),深部(lower:l),およびその中間点(middle:m)でのMN/SDの変化を検討した.なお技師間のバラつきを避けるため第一段階(肝腎コントラストおよび「べったり感」),および第二段階(深部減衰)の検討は一人の技師が行い,第三段階で複数の技師による再現性の検討を行った.
【結果】
第一段階:FL群(n=9),NL群(n=10)および対照腎(K)群(n=19)の順に各指標の平均値は,L(25.6:23.5:17.8),MN(26.2:23.4:18.2),M(159.2:139.6:152.5),SD(3.0:3.4:3.3)であった.3群間での有意差(t-検定,以下同様)は,LおよびMNについてはFL vs K(p<0.01),NL vs K(p<0.01),MNについてはさらにFL vs NL(p<0.05)で見られた.MについてはFL vs NL(p<0.05),SDについてはFL vs NL(p<0.01)で見られた.脂肪肝の「brightness」および「べったり感」は各指標に反映されていることが判った.正常肝との有意差の大きいMNとSDより,MN/SDを「脂肪肝らしさ」の一つの指標と考え,つぎの検討を行った.
第二段階:FL群(n=7)の(u,m,l)におけるMN/SDの平均値は8.8:7.8:6.5,NL群(n=6)の平均値は6.0:7.2:7.7であった.両群ともに(u)と(l)間で有意差(p<0.01)が見られ,FL群の深度によるMN/SDの低下は深部減衰の反映と考えられるが,NL群の上昇の意味は不明である.両群のMN/SD間に有意差(p<0.01)が見られたのは浅部(u)のみであり,深部減衰に影響を受けることの少ない浅部のMN/SDが,「脂肪肝らしさ」をもっともよく示す指標と考えられた.
第三段階:複数技師(n=7)により同様の方法で得られた肝表面(浅部)のMN/SDを検討した.これまでの検討ではFL群に含めていた軽度脂肪肝群を,今回はmFL群(n=6)として独立させ,FL群(n=16),NL群(n=17)と合わせて3群間で比較した.浅部(u)におけるMN/SDの平均値はFL群:8.9,mFL群:7.6,NL群:6.3であった.有意差は各群間に見られ,FL群とmFL群間はp<0.05,FL群とNL群間,mFL群とNL群間ではp<0.01であった.複数技師の集計データも第二段階の結果を支持するものであった.
【考察】
肝表面(浅部)のMN/SDは,「脂肪肝らしさ」を示す指標である可能性を示した.今後,多数例,多施設での再現性の検討とともに,この指標と臨床病態との関連について検討する予定である.