Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
造影超音波検査2

(S572)

造影超音波所見と病理所見の相関を確認しえた肝炎症性偽腫瘍の一例

Correlation between enhancement pattern of contrast-enhanced ultrasonography and histopathological change in hepatic inflammatory pseudotumor

長谷川 直之, 石毛 和紀, 福田 邦明, 安部井 誠人, 兵頭 一之介

Naoyuki HASEGAWA, Kazunori ISHIGE, Kuniaki FUKUDA, Masato ABEI, Ichinosuke HYODO

筑波大学消化器内科

Division of Gastroenterology, University of Tsukuba

キーワード :

【緒言】
肝炎症性偽腫瘍は,炎症細胞の浸潤と線維性結合織の増生を特徴とする炎症性腫瘍で,肝悪性腫瘍との鑑別を要するまれな疾患である.今回,我々は前立腺癌の治療経過中に多発肝腫瘍として発見され,転移性肝腫瘍との鑑別に苦慮した肝炎症性偽腫瘍の一例を経験した.造影超音波および肝腫瘍生検を施行し,造影所見と病理所見の相関を確認しえた.
【症例】
68歳の男性.前立腺癌に対してホルモン療法中に健康診断の腹部超音波で肝腫瘍を指摘された.PET-CTでは肝両葉にFDG集積を示す腫瘍が多発していた.転移性肝腫瘍が疑われ,全身検索が行われたが,前立腺癌以外に原発巣となりうる病変は認められなかった.精査のため本院を紹介された.腹部超音波では肝S5に16mm×13mm大,S6に14mm×13mmの低エコー腫瘍が認められた.ソナゾイド造影超音波では動脈相で腫瘍の辺縁のみ造影され,門脈相でその造影効果は減弱した.腫瘍の中心部は動脈相から門脈相にいたるまで全く造影されなかった.後血管相ではS5,S6の腫瘍全体が低エコーとなるとともに,B-modeでは描出されなかった10mm前後の低エコー腫瘍が両葉に複数認められた.転移性肝腫瘍の鑑別のため,S5の腫瘍より腫瘍生検を施行した.病理では腫瘍の中心部は線維化巣が認められ,腫瘍と肝組織の移行部には線維芽細胞の増生,細血管の増生やリンパ球・形質細胞の浸潤が認められた.肝炎症性偽腫瘍と診断し,3ヶ月後に腹部超音波を再検したところ,多発腫瘍はいずれも縮小傾向となっていた.
【考察】
本症例では,造影超音波所見と病理所見を対比すると,腫瘍内部は線維化巣であったため造影されず,辺縁は細血管の増生により動脈相で造影されたと推測できる.炎症性偽腫瘍の造影超音波所見は,腫瘍に含まれる線維組織や炎症細胞といったコンポーネントに依存して個々に異なる可能性が考えられる.
【結語】
造影超音波所見と病理所見の相関を確認しえた肝炎症性偽腫瘍の一例を経験した.今後も症例を蓄積し,造影所見と病理組織を対比・検討していくことが必要と考えられる.