橋本 健二^{1, 2}, 田中 弘教^{1, 2}, 中野 智景^{1, 2}, 山平 正浩¹, 吉田 昌弘¹, 柴田 陽子¹, 東浦 晶子¹, 橋本 眞里子¹, 西口 修平², 飯島 尋子^{1, 2}

Kenji HASHIMOTO^{1, 2}, Hironori TANAKA^{1, 2}, Chikage NAKANO^{1, 2}, Masahiro YAMAHIRA¹, Masahiro YOSHIDA¹, Yoko SHIBATA¹, Akiko HIGASHIURA¹, Mariko HASHIMOTO¹, Shuhei NISHIGUCHI², Hiroko IIJIMA^{1, 2}

¹兵庫医科大学病院超音波センター, ²兵庫医科大学病院肝胆膵科

¹Depertment of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan, ²Depertment of Internal Medicine, Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan

キーワード :

肝膿瘍は適切な診断や処置が行われない場合，敗血症や多臓器不全を併発し致命的となることがあり，適切な治療時期の決定が重要である．また臨床的に診断が容易な事もあるが，転移性肝腫瘍などの腫瘍性病変と鑑別が困難な症例も存在する．ソナゾイド造影超音波検査（CEUS）は肝臓の腫瘍性病変の鑑別に有用であるが，肝膿瘍に関する報告は少ない．当院で経験した肝膿瘍のBモードとCEUS所見の特徴像を検討したので報告する．
【対象と方法】
2009年1月から2013年11月に画像診断と臨床経過により肝膿瘍と診断され，CEUSが行われた9例11結節．平均年齢66.6±16.6歳，男性5例，女性4例を対象とした．Bモードでは腫瘤径，輝度（hyper，hypo，mix），形状（整，不整），腫瘤内部の無エコーの有無，腫瘤周囲高エコーの有無を検討した．CEUSでは動脈優位相の染影パターン（蜂巣状，均一，ring状），染影部と周囲肝実質との境界，腫瘤境界部外側の染影の有無を観察後，門脈優位相，Kupffer相で腫瘤内の染影された部分の検討を行った．
【結果】
肝膿瘍の原因は細菌性4例，真菌性1例，不明4例（胆嚢炎からの波及等を含む），単発4例，多発5例．症状は，8例（89％）に発熱を認め，1例（11％）は心窩部痛のみであった．CEUS施行までの日数は，症状発現後14.2（5-32）日であった．腫瘤径は平均37.5（8-73）cm，全例で形状不整，境界不明瞭．輝度は7結節（64％）がhypo，4結節（36％）がmixであった．腫瘤周囲高エコーは全例で認めた．腫瘤内部無エコーは8結節（73％）に認めた．CEUS所見の検討では，動脈優位相で腫瘤内の染影パターンは蜂巣状8結節（73％），均一1結節（9％），ring状2結節（18％）であり，10結節（91％）でavascularなareaを認めた．また全例で周囲肝実質との境界が不明瞭で9結節（82％）で腫瘤境界部外側にhypervascular areaを認めた．腫瘤内の染影された部分は，全例門脈優位相，Kupffer相で染影低下を認めた．Micro Flow Imagingでは5結節（71％）で腫瘤内に周囲と同様の血管構造を認めた．今回の症例のうち，3例はCEUSで経過観察したがいずれも症状改善の把握に有用であった．
【考察】
肝膿瘍は時期により画像所見が変化し，腫瘍性病変との鑑別が困難な症例や治療時期の決定に難渋する症例もある．今回の検討で，動脈優位相での腫瘤周囲と境界不明瞭な染影，周囲から腫瘤内に既存の血管構造を認めることが腫瘍性病変との鑑別に有用であった．また腫瘤内の無エコー域が不明瞭な場合でも動脈優位相では液状化の進んだavascular areaが明瞭となり，膿瘍ドレナージ時期の決定に有用と考えた．更にKupffer相では膿瘍の範囲が明瞭に描出され，治療効果の経過の確認に有用であった．
【結語】
CEUSは肝膿瘍の診断，治療時期や治療効果の判定に有用である．