Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
Elastography2

(S569)

フィブロスキャンによる慢性肝疾患の肝予備能の推定

Non-invasive assessment of liver function in patients with chronic liver disease using FibroScan transient elastography

堀井 里和, 荒井 邦明, 金子 周一

Rika HORII, Kuniaki ARAI, Shuichi KANEKO

金沢大学附属病院消化器内科

Department, Kanazawa University

キーワード :

【目的】
近年ではウィルス性肝炎のみならず,脂肪性肝炎など非ウィルス性肝疾患の高度線維化例からの発癌が増加している.肝線維化の非侵襲的な評価方法として,フィブロスキャンの有用性が報告されており,癌の高危険度群の検出や門脈圧亢進症診断など,予後診断への応用も期待されている.同じF4の肝線維化進行例であっても,フィブロスキャンで測定される肝弾性度は幅広く,予備能が高度に低下した非代償性肝硬変症例と比較的保たれた代償性肝硬変症例とを鑑別できる可能性がある.今回,フィブロスキャンによる肝弾性度測定により,肝予備能の推測が可能か検討を行った.
【対象】
2013年1月から10月まで当院でFibroscan 502(Echosens)を施行した295例(男性179例,女性116例)を対象とした.疾患はB型肝炎45例,C型肝炎91例,NAFLD62例,その他97例であった.フィブロスキャン測定前後に肝生検を施行した症例は181例であり,線維化F1/F2/F3/F4はそれぞれ66/25/41/49例であった.
【結果】
Success rateは82.7±23.0%,弾性度(kPa)は平均13.5±12.8kPaであった.
測定不良が疑われるSuccess rate 60%未満は15.2%,kPa IQR / med. 40%超は18.3%であった.F4の診断において,弾性度のcut off値14.3kPaとした場合,AUROC 0.89,感度82.0%,特異度80.5%であり,フィブロスキャンは高度線維化進行例の診断に有用であった.線維化の指標として,弾性度は単変量解析では血小板数(相関係数-0.362,P<0.001),血清ヒアルロン酸値(相関係数0.454,P<0.01),typeⅣコラーゲン7S値(相関係数0.644,P<0.001),P-Ⅲ-P値(相関係数0.182,P=0.009)などと良好な相関を認めた.加えて予備能の指標としては,PT%(相関係数-0.401,P<0.001),血清アルブミン値(相関係数-0.442,P<0.001),血清コレステロール値(相関係数-0.152,P=0.011),ICG15分消失率(相関係数0.387,P<0.001),肝アシアロシンチグラフィ値(全肝クリアランス/肝容積:ml/min/ml Liver)(相関係数-0.515,P<0.001)などと有意な相関を認めた.さらに肝アシアロシンチグラフィ値が0.15ml/min/ml Liver以下の高度肝予備能低下例の診断において,弾性度のcut off値を20.9kPaとした場合,AUROC 0.85,感度73.7%,特異度80.4%であった.
【結語】
フィブロスキャンは慢性肝疾患において高度線維化例の検出に有用であった.さらに,肝予備能の評価にも有用で,とくに肝アシアロシンチグラフィ値との高い相関を認めた.フィブロスキャンの弾性度は治療後に肝不全を招きかねない肝硬変症例の予備能低下症例の検出に有用である可能性が示唆された.