多田 俊史, 熊田 卓, 豊田 秀徳, 金森 明

Toshifumi TADA, Takashi KUMADA, Hidenori TOYODA, Akira KANAMORI

大垣市民病院消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
近年，肝線維化診断におけるElastography診断の進歩は著しい．超音波診断装置Aixplorer（SuperSonic Imagine社製）はShear Wave Elastography（SWE）が搭載され定量的に組織弾性をリアルタイムに測定・表示可能である．しかし，SWEの測定値は肝のうっ血，炎症や黄疸の影響を受けることも指摘されている．今回，SWEの有用性と測定値に影響を与える因子について検討を行った．
【方法】
対象は当院で肝生検もしくは肝切除が施行され，線維化ステージ（F0-F4）が判明し，かつSWEを用いて組織弾性を評価した慢性肝疾患の患者262例を対象とした．
【結果】
1）性別（男性/女性）は150/112例，年齢は62（23-87）歳で，BMIは22.5（14.1-31.6）kg/m2であった．線維化ステージはF0/F1/F2/F3/F4の順に15/118/60/41/28例であった．背景肝はHBV/HCV/NASH/その他の順に46/192/16/8例であった．ALTは23（5-372）IU/L，総ビリルビンは0.7（0.3-3.9）mg/dl，FIB4 indexは1.9（0.4-29.5），血小板は19.5（3.9-45.2）万/lで，AFPは3.4（1.0-258.2）ng/mlであった．組織弾性値はF01/F2/F3/F4の順に6.6±2.6/9.4±4.6/12.3±5.9/14.3±6.2kPaであった（P＜0.001）．続いて，F0-2とF3-4の鑑別に関してROC解析を行った結果，SWEのAUCは0.802（95％CI: 0.724-0.862）であった．またカットオフ値を8.7kPaとしたときの感度は71.0％，特異度は79.3％であった．さらにFIB4-indexのAUCは0.804（95％CI: 0.726-0.865）でSWEとFIB4-indexに有意差は認められなかった．2）ALTが基準値以内/超において，弾性値はF0-2で6.5±2.5/9.8±4.4kPa，F3-4で10.3±5.1/16.0±5.0kPaとそれぞれALT高値例において有意に弾性値が高い結果となった（P＜0.001）．さらにAFPが10ng/ml未満/以上においても，弾性値はF0-2で6.7±2.5/13.4±4.8kPa，F3-4で11.3±5.3/17.4±5.4kPaとそれぞれAFP高値例において有意に弾性値が高い結果となった（P＜0.001）．3）年齢，ALT，γGTP，血小板，総ビリルビン，アルブミン，AFPおよびBMIを投入因子として検討した多重ロジステック解析では，弾性値が高値（10kPa以上）に関与する因子として，ALT（オッズ比1.024，95％CI: 1.010-1.038，P＜0.001），総ビリルビン（オッズ比10.736，95％CI: 1.815-63.520，P=0.009），血小板（オッズ比1.351，95％CI: 1.180-1.548，P＜0.001），BMI（オッズ比1.249，95％CI: 1.040-1.500，P=0.017）がそれぞれ選択された．
【結論】
SWEによる組織弾性値は肝の線維化がすすむにつれ有意に上昇し，さらに線維化マーカーとして有用とされているFIB4-indexと診断能は同等であった．しかし弾性値はALTやAFPなどの値に影響を受け，その値の解釈には血液データなども十分に考慮した上で判断することが重要であると考えられた．