Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
Elastography2

(S568)

肥満と肝脂肪沈着が2種のShear wave elastographyに及ぼす影響について

Obesity and liver steatosis may affect two Shear wave elastography

是永 圭子1, 澤部 祥子2, 只野 薫2, 伊藤 里美2, 酒井 あずさ2, 是永 匡紹3, 今村 雅俊1, 溝上 雅史3

Keiko KORENAGA1, Syouko SAWABE2, Kaoru TADANO2, Satomi ITOU2, Azusa SAKAI2, Masaaki KORENAGA3, Masatoshi IMAMURA1, Masashi MIZOKAMI3

1国立国際医療研究センター国府台病院消化器・肝臓内科, 2国立国際医療研究センター国府台病院中央検査部, 3国立国際医療研究センター国府台病院肝炎・免疫研究センター

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Kohnodai Hospital, National Center for Grobal Health and Medicine, 2Department of Clinical Laboratory, Kohnodai Hospital, National Center for Grobal Health and Medicine, 3The Research Center of Hepatitis and Immunology, Kohnodai Hospital, National Center for Grobal Health and Medicine

キーワード :

【目的】
肝エラストグラフィーの測定に影響する因子として,Fibroscanでは肥満が知られている.Virtual Touch Quantification(VTQ)では,body mass index(BMI)とは関連がないという報告や脂肪肝症例においては健常者に比して測定値が低いとの報告もあるが,一定の見解は得られていない.今回は,肥満と肝脂肪沈着がVTQとFibroscanに及ぼす影響について検討した.
【方法】
2013年2月から10月末までVTQとFibroscanの同時測定を行った症例のうち,1)肝炎ウイルスマーカーは陰性.アルコールや自己免疫性肝疾患との関連は否定されている.2)肝線維化のリスクある糖尿病の併存がない.3)肝線維化の影響を除くため,線維化予測式FIB-4の値がlow index(<1.30)である.4)炎症の影響を除くため,transaminase値が正常範囲である.5)測定値の四分位範囲/中央値<30%という条件を満たし,超音波検査でbright liverの所見を認めるものを「脂肪肝群」,肝臓にbright liverや慢性肝疾患の所見を認めず基礎疾患も有しないものを「対照群」とした.「脂肪肝群」は57例(男29例/女28例,年齢56±14歳),「対照群」は42例(男21例/女21例,年齢56±14歳),合計99例を対象とした.VTQでは超音波機種ACUSON S2000(Siemence)と4C1コンベックスプローブを用い,Shear wave velocity(Vs)値を測定した.測定のためのROIの深度は肝表面からROI1個分下を目安に設置した.FibroscanではMプローブを用いLiver Stiffness(LS)値を測定した.脂肪肝と対照2群のVs・TE値を,BMIやFiboscanで計測されるcontrolled attenuation parameter(CAP)などの因子を加味して比較した.
【成績】
脂肪肝群のVs値は対照群に比して有意に低かった(脂肪肝0.964±0.138m/s,対照1.104±0.090m/s,P<0.0001).脂肪肝群のLSは対照群に比して有意に高かった(脂肪肝4.25±0.99kPa,対照3.70±0.82 kPa,P<0.005).しかし,脂肪肝群のBMIも対照群に比較して有意に高く(脂肪肝25.1±0.6,対照21.5±0.4,P<0.001),体表から肝表までの距離やVTQのROIの深度も有意に高値だった.BMIと肝表面までの距離,BMIとROIの深度,BMIとCAPの間にはそれぞれ有意な正の相関を認め,これらは肥満を背景にした関連因子であることが確認された.更に,Vsとこれらの因子の間には負の相関を認めた(Vsと肝表までの距離;r=-0.5280,P<0.0001,VsとCAP; r=-0.5124,P<0.0001,VsとROIの深度;r=-0.3578,P<0.0005,VsとBMI; r=-0.3560,P<0.0005).LSとこれらの因子の間には正の相関を認めた(LSとBMI; r=0.3434,P<0.0005,LSとCAP; r=0.3368,P<0.001,LSと肝表までの距離;r=0.3215,P<0.005).CAP値259dB/mをcut off値をして,脂肪肝群を「中等・高度脂肪肝」と「軽度脂肪肝」の2群に大別した.2群間にBMIや体表から肝表までの距離に有意差がないに関わらず,中等度・高度脂肪肝群のVs値は軽度脂肪肝に比較して有意に低かった(中等度・高度脂肪肝群n=29,Vs; 0.929±0.020m/s,軽度脂肪肝n=28,1.001±0.030m/s).一方,中等度・高度脂肪肝群のLS値は軽度脂肪肝に比較して高かったが,有意差はなかった.
【結論】
肥満と肝脂肪化は2種のエラストグラフィーに影響を及ぼすことが示唆された.影響の程度は対照に比してさほど大きくなく,エラストグラフィーの診断価値やnon-alchoholic fatty liver disease(NAFLD)から高度線維化を伴ったsteatohepatitisを抽出するエラストグラフィーの有用性を脅かすものではない.しかし,肥満を伴ったNAFLD症例では,VTQは軽度の線維化例をunderestimateする可能性やFibroscanでは単純性脂肪肝をoverestimateする可能性もあることを念頭に置く必要があると考える.