Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
3D1

(S564)

Fry thru法におけるアーチファクト

Incorrect presentation during Fly thru due to US artifacts

長沼 裕子1, 石田 秀明2, 大山 葉子3, 渡部 多佳子2, 長井 裕4, 船岡 正人1, 藤盛 修成1, 武内 郷子1, 井鳥 杏菜5, 嶺 喜隆5

Hiroko NAGANUMA1, Hideaki ISHIDA2, Yoko OHYAMA3, Takako WATANABE2, Hiroshi NAGAI4, Masato FUNAOKA1, Shusei FUJIMORI1, Satoko TAKEUCHI1, Anna ITORI5, Yoshitaka MINE5

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4NGI研究所, 5東芝メディカルシステムス超音波担当

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Center of Disgnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4New Generation Imaging Laboratory, 5Ultrasound System Group, Toshiba Medical Systems

キーワード :

【はじめに】
近年のコンピューター技術の進歩に伴いvolume dataの多彩な活用が可能となってきた.その中でも,volume data内に含まれる無エコー部全体を結合させて表示する手法の一種であるFly thru(Fly through,以下FL法)が開発され,その診断的価値が注目されてきている.しかし,B-modeを基にvolume dataを作成するため,B-modeでのアーチファクトの影響を受けることが想定される.今回,我々はFL法におけるアーチファクトを経験し若干の知見を得たので報告する.使用超音波装置:東芝社製Aplio500.プローブは機械式3Dプローブ(中心周波数:3-4MHz).
【Data収得とFL像作成法】
3Dプローブを自動的に作動させvolume dataを収得する.そのvolume dataから無エコー構造物を空間的に配置するcavity modeを発展させたソフトを用い,動的に無エコー構造物の中を進みながら,透視投影法により内視鏡のような視界で内腔を観察する.
【症例1】
70歳代男性.農作業中に胸部圧迫感,動悸,息切れ出現し受診.心房細動,心不全,心内血栓,腎不全の診断で入院加療中,肝機能障害が出現しUS施行した.USで胆嚢デブリ,腹水,両側胸水の所見であった.FL法で,腹水から左横隔膜の裂孔を通過して胸水に入る所見が見られた.数日前に施行していた胸部CTでは横隔膜に裂孔は認めなかった.
【症例2】
50歳代男性.肝硬変で治療中.食道静脈瘤硬化療法後に黄疸が持続し,精査目的のUSで腹水,左胸水,肝硬変の所見を認めた.FL法で腹水から胸水に左横隔膜の裂孔を通過していくFL法でのアーチファクトがみられた.胸部X線,腹部CTでは横隔膜の裂孔の所見は見られなかった.
【まとめと考察】
FL法で作成された画像は,他の手法では得られない,優れたvirtual reality空間を提示してくれるなど,超音波診断の新たな可能性を開くものと期待される.しかし,volume dataはB-modeを多数枚取得して作成されるものであるため,B-mode上のアーチファクトが反映されることになり,volume dataをもとに画像化するFL法でもアーチファクトの影響があると考えられ,認識しておく必要がある.我々が今回経験したFL法におけるアーチファクトはそのことを考えさせられる興味深い所見であった.弧を描く横隔膜のような構造物に超音波ビームが接線方向にあたった場合,超音波ビームは反射して戻らないためにその部分は画像を結ばずに欠損となる.その場合,実際にはない裂孔が存在するかのようにFL法で表現されることになり,今回の症例でも,腹水側から胸水側に実際にはない横隔膜の裂孔を通過していくという所見が得られた.このようなFL法におけるアーチファクトについて注意する必要があり,今後さらに症例数を増やして検討したい.