Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓3

(S562)

アルコール性過形成結節と鑑別に苦慮した高分化型肝細胞癌の2例

Two cases of well-differentiated hepatocellular carcinoma difficult to distinguish from hyperplastic nodule in alcoholic liver disease

大野 香織, 馬渡 誠一, 玉井 努, 豊倉 恵理子, 熊谷 公太郎, 森内 昭博, 宇都 浩文, 桶谷 眞, 井戸 章雄

Kaori OHNO, Seiichi MAWATARI, Tsutomu TAMAI, Eriko TOYOKURA, Koutarou KUMAGAI, Akihiro MORIUCHI, Hirofumi UTO, Makoto OKETANI, Akio IDO

鹿児島大学病院鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学

Digestive Disease and Life-style Related Disease, Kagoshima University

キーワード :

アルコール性慢性肝障害にみられる過形成結節は,肝細胞癌と類似した造影パターンを呈することがあり,鑑別が困難な場合がある.今回我々はアルコール性肝障害を背景とし,診断に難渋した高分化型肝細胞癌の2例を経験したので報告する.
症例1.37歳の男性.20歳代より1日焼酎3〜4合の飲酒歴があった.近医にて肝機能障害を指摘され,その際の腹部超音波検査Bモードにて,肝S6に17×16mmの境界明瞭,内部均一な低エコー腫瘍を認め紹介となった.肝S6の腫瘍は,造影超音波動脈優位相にて染影を認め,門脈優位相でも動脈相と同様になり,Kupffer相・advanced dynamic flow(ADF)では染影低下を認めなかった.EOB-MRI検査ではT1強調画像にて高信号,T2強調画像にて低信号を呈し,肝細胞造影相では等信号を呈した.画像上アルコール性過形成結節を疑ったが,病理所見では高分化型肝細胞癌の結果であった.
症例2.46歳の男性.焼酎3合/日の飲酒歴があった.近医にてアルコール性肝障害として経過中,腹部CT検査にて肝S4に18×15mmの濃染する腫瘍を認め当科紹介となった.腹部超音波検査Bモードでは肝S4にhaloを伴う境界明瞭,内部はモザイク様の低エコーを呈し,その他肝S6に14×11mmの境界明瞭,内部均一な低エコー腫瘍を認めた.肝S4の腫瘍は,造影超音波検査にて典型的な肝細胞癌像を呈したが,肝S6の腫瘍は,動脈優位相で肝周囲と同等に染影し,門脈優位相でやや染影の持続〜等エコーとなり,Kupffer相・ADFでは染影低下を認めなかった.EOB-MRI検査でS4の腫瘤はT1強調画像で高信号,T2強調画像で等信号,動脈優位相で濃染し,門脈相では肝周囲と等信号,肝細胞相では高信号を呈し,肝S6の腫瘍は,T1強調画像で高信号,T2強調画像で等〜低信号,動脈優位相で淡く濃染し,門脈相,肝細胞相では等信号を呈した.両病変とも肝腫瘍生検を施行し,S4病変は中分化型肝細胞癌,S6病変は高分化型肝細胞癌の結果であった.
【考察】
高分化型肝細胞癌は造影超音波検査動脈優位相で等〜低エコー,門脈優位相では等〜低エコーかつearly washoutなく,Kupffer相で等〜低エコーを呈し,ADFではKupffer相と比較し高率に染影低下を検出できると報告されている.本症例は2例とも動脈優位相で染影し,Kupffer相・ADFで染影低下を認めず,アルコール性過形成結節を疑ったが,最終診断は高分化型肝細胞癌であった.
【結語】
アルコール性肝障害を背景とした肝腫瘍性病変は非典型像を呈することがあり,厳重な経過観察や組織学的検査が必要である.