Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓3

(S562)

転移性肝癌と原発性肝癌の鑑別が困難であった1例

A case of metastatic liver cancer with difficulty for imaging differential diagnosis with hepatocellular carcinoma

岸野 恭平1, 會澤 信弘2, 東浦 晶子3, 橋本 眞里子3, 中野 智景2, 3, 橋本 健二2, 3, 田中 弘教2, 3, 飯島 尋子2, 3, 西口 修平2

Kyouhei KISHINO1, Nobuhiro AIZAWA2, Akiko HIGASHIURA3, Mariko HASHIMOTO3, Chikage NAKANO2, 3, Kenji HASHIMOTO2, 3, Hironori TANAKA2, 3, Hiroko IIJIMA2, 3, Shuhei NISHIGUCHI2

1兵庫医科大学卒後臨床研修センター, 2兵庫医科大学肝胆膵内科, 3兵庫医科大学超音波センター

1Post-Graduate Training Center, Hyogo College of Medicine, 2Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine, 3Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【はじめに】
転移性肝腫瘍の診断は治療方針を考慮する上で非常に重要である.画像診断は比較的容易なことが多いが,時に孤立性の結節でring enhancementを認めない場合等は診断が困難な場合も有する.今回,転移性肝癌と原発性肝癌の鑑別が困難であった1例を経験したので報告する.
【症例】
63歳・男性
【家族歴】
特記なし,アルコール:5合以上を30年間,現在は機会飲酒.
平成23年2月に胃体部3型進行癌に対して胃全摘術施行された.stage IIIであり,術後TS-1による補助化学療法を7 kur施行し経過観察されていた.平成25年8月胸腹部造影CTで肝S1に20mm大のSOLを指摘された.胃癌術後再発が疑われ,FDG-PET検査を施行し,同部位にのみFDG集積(SUVmax=2.36)を認めた.肝SOL精査目的で当科紹介受診となった.腹部EOB-MRIでは,T1WIにて低信号,T2WIにてやや高信号を示し,動脈相で造影効果を認め,後期相でwash outを認めた.肝細胞造影相で低信号を呈した.腹部造影CTでも同様にSOLは早期に濃染を認め平衡相でwash outを呈した.
腹部超音波検査では境界明瞭で内部不均一な低エコーのSOLを認め,Sonazoid造影では全体が動脈優位相でhypervascular,門脈優位相ではhypovascular,Kupffer相でdefectを呈した.また,VTQによる硬度測定を行いSOLは0.7m/s,背景肝は1.33m/sであり,SOLの硬度は周囲の肝実質よりも低値であった.血液検査ではAFP 36.1 ng/ml,PIVKA-II 28,CEA 2.4ng/ml,CA19-9 6.2U/ml,と軽度AFP上昇を認めた.
以上よりアルコール性肝炎を背景に発生した肝細胞癌と診断した.H25年10月に尾状葉切除術を施行した.切除標本は転移性腺癌であり,胃癌の肝転移と考えられた.また,免疫染色でAFPが陽性であった.原発巣である胃癌組織のAFP染色は陰性であり,肝転移によりAFP産生の形質を得た可能性が考えられた.
【考察】
各種画像上ring enhancementは認めず,腫瘍全体が濃染し,wash outを認めており,超音波検査で背景肝に比べ硬度は低く,AFP上昇も認めることから肝細胞癌と診断したが,転移性肝癌であった.過去の検討では転移性肝癌はVTQによる硬度測定でVs値は高値となることが多い.今回の症例では腫瘍は深部に位置しており,下大静脈に近接していることが測定値に影響を与えた可能性が考えられた.また,本症例では肝転移巣でのみAFP産生を認めており非常に興味深いと考えられた.
【まとめ】
造影パターン,腫瘍の硬度測定値が肝細胞癌に近似しているため診断が困難であった転移性肝癌の1症例を経験した.転移性腫瘍の鑑別を行う上で意義深い症例と考えられた.