Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓3

(S561)

小型低分化型肝細胞癌の超音波診断

Usefullness of contrast enhanced ultrasonography in detecting small poorly differentiated hepatocellular carcinoma

安井 豊, 土谷 薫, 玉城 信治, 鈴木 祥子, 細川 貴範, 上田 研, 中西 裕之, 板倉 潤, 黒崎 雅之, 泉 並木

Yutaka YASUI, Kaoru TSUCHIYA, Nobuharu TAMAKI, Shoko SUZUKI, Takanori HOSOKAWA, Ken UEDA, Hiroyuki NAKANISHI, Jun ITAKURA, Masayuki KUROSAKI, Namiki IZUMI

武蔵野赤十字病院消化器科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Musashino Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
造影超音波検査は肝細胞癌の悪性度診断,中低分化型肝細胞癌の拾い上げに有用であることが報告されている.今回我々は,超音波検査所見が低分化型肝細胞癌の拾い上げに有用であるかを検討した.
【方法】
病理学的に肝細胞癌(HCC)の診断が得られた3cm以下の189例195結節を対象とし,低分化型肝細胞癌とそれ以外の結節についての術前画像所見を比較検討した.Bモード,造影超音波検査(CEUS)の各画像所見と,病理診断とを比較検討した.CEUSはソナゾイド0.5ml/bodyを急速静注後1分間vascular phaseを撮像し,vascular phaseの30秒以降は動脈後期相としてwash outの有無を観察した.その後maximum injection projection法を用いて腫瘍微細血管パターン(MIPパターン)を判定,10分後からKupffer相の観察を行った.MIPパターンは既報のごとくfine・vascular・irregularに分類,CEUS Kupffer相はcomplete defect(defect),hypo echoic(hypo),iso echoic(iso)に分類し解析を行った.
【結果】
195結節中,低分化型HCCは16結節であった.Bモードでは低分化型HCCの70%は低エコー,30%は高エコーであった.CEUS vascular phaseでは2結節のみがiso vascularと診断され,その他はhyper vascularであった.動脈後期相を観察しえた7結節ではwash outを認めた結節が5結節(71%)であり,2結節にはwash outを認めなかった.MIP像が判定可能であった低分化型HCC8結節のうちCEUS MIPパターンはfine 2結節,vascular 5結節,irregular 1結節であり,71%がvascular/irregularであった.fineと判定した結節はいずれも15mm以下の非常に小型の結節であった.CEUS Kupffe相はhypoと診断した1結節を除き全例defectであった.さらに小型の低分化型肝細胞癌の所見を検討する目的で,15mm以下に限定して画像所見の比較を行った.15mm以下の低分化型肝細胞癌は,全例が動脈後期相の早期wash outを認め,CEUS Kupffer相defectであった.また,これらの結節はMRI拡散強調像も高信号であった.
16例全例にラジオ波焼灼術治療が施行されており,初発肝細胞癌は8例であった.8例中3例に局所再発を認めたが,15mm以下の低分化型HCCでは局所再発は認めなかった.
【考察】
CEUS動脈後期相のwash out,MIPパターンvascular/irregular,Kupffer相complete defectが,低分化型肝細胞癌に特徴的な所見であった.15mm以下の結節においては,MIPパターンよりは動脈後期相の早期wash out所見やKupffer相所見をより重視すべきと考えられた.これらの所見を呈したものであっても,15mm以下の結節であれば局所治療による根治が得られる可能性が示唆された.
【結論】
低分化型肝細胞癌の術前画像診断造影超音波検査の各所見を組み合わせて診断することが有用である.