Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
消化管2

(S559)

大腸癌術前精査における体外式超音波検査の肝転移,進行度診断能の検討

The efficacy of transabdominal ultrasonography for diagnosing hepatic metastasis and staging of cancer progression in colonic cancer

西田 睦1, 2, 柴崎 晋3, 佐藤 恵美1, 4, 工藤 悠輔1, 2, 表原 里実1, 2, 加藤 扶美5, 工藤 與亮5, 下國 達志3, 高橋 典彦3, 清水 力2

Mutusmi NISHIDA1, 2, Susumu SHIBASAKI3, Megumi SATO1, 4, Yusuke KUDO1, 2, Satomi OMOTEHARA1, 2, Fumi KATO5, Kohsuke KUDO5, Tatsushi SHIMOKUNI3, Norihiko TAKAHASHI3, Fumi KATO2

1北海道大学病院超音波センター, 2北海道大学病院検査・輸血部, 3北海道大学消化器外科I, 4北海道大学病院放射線部, 5北海道大学病院放射線診断科

1Diagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital, 2Division of Clinical Laboratory and Transfusion, Hokkaido University Hospital, 3Gastroenterological Surgery I, Hokkaido University, 4Department of Radiology, Hokkaido University Hospital, 5Department of Diagnostic and Interventional Radiology, Hokkaido University Hospital

キーワード :

【目的】
大腸癌の進行度診断は切除範囲,廓清範囲などの術式決定に重要である.我々は過去に体外式超音波検査(US)による82病変の存在診断率は96.3%(79/82),T因子正診率は62.2%(51/82病変), T1: 76.2%(16/21), T2: 12.5%(1/8), T3: 71.4%(25/35), T4: 50.0%(9/18)であり,N因子診断は感度62.1%(18/29),特異度69.8%(37/53),正診率67.0%(55/82)と報告した.今回はUSの肝転移,進行度診断の有用性についてCTと対比して後方視的に検討したので報告する.
【対象・方法】
2011年〜2013年7月に,下部消化管内視鏡検査にて大腸癌と診断され術前にUSおよびCT検査を行い,大腸切除を施行した79例を対象とした.造影USは37例に施行した.装置は東芝Aplio XG/ 500.使用プローブ:中心周波数帯3.75MHz, 6MHz, 7.5MHz.造影剤はSonazoid(0.01〜0.0075ml/kg)を用いた.肝転移診断はBモード,造影USとも日本超音波医学会の肝腫瘤診断基準に基づき行った.CT診断は放射線科診断医の読影レポートを参照した.癌の進行度診断は肝転移,腹膜播種を遠隔転移とし大腸癌取扱い規約第8版に基づいて行った.術後の最終診断を確定診断とし,肝転移診断はUS,CTの診断精度,USとCTの診断能の比較,進行度診断についてはUSまたはCT診断と術後最終診断との一致率,USとCT診断の診断能を比較検討した.の統計学的解析はMcNemar検定およびカッパー係数にて行い,P<0.05を有意差ありとした.
【結果・考察】
肝転移は14例に認められた.USでは転移陽性14例,陰性65例と全例正診した.CTでは転移陽性14例,陰性61例,偽陽性4例であった.肝転移診断の感度,特異度,正診率,PPV, NPVはUSでは100%,100%,100%,100%,100%,CTでは100%,93.8%,94.9%,77.8%,100%であった.2つの検査間に有意差はみられなかった(p=0.125).進行度はStage0 2例,Stage I 17例,Stage II 25例,Stage IIIa 13例,Stage IIIb 6例,Stage IV 16例であった.病変を同定し,進行度診断が可能であったのはUS76例,CT46例であった.進行度診断の一致率(カッパー係数)はUS診断0.497(P=0.00)とmoderate, CT診断0.252(P=0.001)とfairであった.USではCTよりも有意に正診率が高かった(P=0.000).大腸癌肝転移診断におけるCT偽陽性例は転移を否定できない小さな低吸収域であり,USでは典型的な嚢胞の所見であった.USによる進行度診断では直腸の早期癌でT因子診断が困難で,N因子診断は偽陽性例が多くみられた.進行度診断においてCTに比してUSの正診率が有意に高かったことは,高い空間分解能により比較的小さな大腸癌でも同定が可能であったこと,肝転移診断能が良好であったことが寄与していると考えられた.
【結論】
大腸癌術前精査において体外式USの肝転移診断は良好で,進行度診断は中等度の一致であった.